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憲法総論

 憲法の条文につきましてはページ下部に記載しております。条文を確認していきながら読み進めて戴けますと内容がつかみやすくなっております。裁判所判例も本文と重複して憲法条文と一緒に掲載してありますので興味のある方はご覧下さい。

1.憲法の法律体系

 憲法は国の基本ルールであり、すべての法令の上位に位置します。すべての法律、命令、条例などは憲法の趣旨にそっていなければなりません。

1-1.基本原理

憲法の基本原理は次の4つによって成り立っています。
①政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意しここに主権が国民に存することを宣言しこの憲法を確定する。そして国政は国民の厳粛な信託によるものであって、その権威は国民に由来しその権力は国民の代表者がこれを行使しその福利は国民がこれを享受する。 ②日本国民は恒久の平和を念願し人間相互との関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼してわれらの安全と共存を保持しようと決意した。全世界の国民が等しく恐怖と欠乏から免れ平和のうちに生存する権利を有することを確認する。 ③われらはいずれの国家も自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであって政治道徳の法則は普遍的なものであり、この法則を従うことは自国の主権を維持し、他国と対等関係に立とうとする各国の責務であると信ずる。 ④日本国民は国家の名誉にかけ全力を挙げてこの崇高な理想と目的を達成することを誓う。

1-2.日本国憲法の成り立ち

大日本帝国憲法(明治憲法)から改正された日本国憲法の基本原理は次の3つです。
  • ■国民主権
  • ■基本的人権の尊重
  • ■平和主義
(1)国民主権
①国民主権の成り立ち  国民主権とは国の運営の在り方について最終決定をする権利が国民にあるということです。これは明治憲法が天皇主権・君主主権であったが、戦後日本国憲法に代わり主権も天皇から国民へと変わり主権が国民に移りました。国民主権は日本国憲法前文及び憲法第1条で条文に記載しています。 ■憲法1条 天皇の地位、国民主権 ②主権とは  主権には次の3つの意味があります。
1.国家独立性
国家間においては主権とは一国の統治権力の独立性を意味し、植民地などではなく他国から独立していることを意味しています。これを国家の独立性と呼びます。
2.国家統治権
国内ではまず国家に統治権があり様々な犯罪組織を取り締まることができるのは国家に統治権があるからです。
3.国政決定権
国家のありかたを最終的にきめることができる権力が誰にあるのかというその決定権のことです。国民主権はこの国政決定権が国民にあることを表しています。
(2)基本的人権の尊重  基本的人権は人間がもともと持っている自由や権利のことです。たとえば職業選択の自由や学問をする自由、不当に逮捕されない、公務員から拷問を受けないなどを保障しています。憲法では次の条文に原則規定が明記されています。
  • ①基本的人権の享有と永久不可侵性 ■憲法11条 基本的人権の享有 ■憲法97条 基本的人権の本質
  • ②自由・権利の保持の責任とその濫用の禁止 ■憲法12条 自由・権利の保持の責任とその濫用の禁止
  • ③幸福追求権及び公共の福祉に反する場合の制限 ■憲法13条 幸福追求権
  • 【判例 喫煙禁止違憲訴訟 昭和45年9月16日】 ◇事案・争点  禁煙の監獄で受刑者が喫煙を求めたが喫煙の自由は制限するとされ憲法13条幸福追求権に違憲であると主張。 ◇判旨  監獄内での喫煙による火災発生、それに乗じて逃亡の恐れがある。タバコは嗜好品にすぎず受刑者に対し喫煙禁止制限は合理的制限であり憲法13条に違憲しない。 【判例】  ・指紋押捺事件 平成7年12月15日  ・京都府学連事件 昭和44年12月24日  ・写真週刊誌に対する損害賠償請求権事件 平成17年11月10日  ・自動速度監視装置による写真撮影の合憲性 昭和61年2月14日  ・前科照会事件 昭和56年4月14日  ・エホバの証人不同意輸血損害賠償事件 平成12年2月29日
  • ④法の下の平等 ■憲法14条 法の下の平等
(3)平和主義  平和主義は侵略のための戦争と武力による威嚇又は武力の行使の為の戦力の保持を拒否しています。それは憲法9条により明記されています。 ■憲法9条 戦争の放棄、戦力の不保持および交戦権の否認
【判例 砂川事件 昭和34年12月16日】  砂川事件は東京都北多摩郡砂川町のアメリカ軍の立川基地拡張に対する反対運動をめぐる一連の事件です。 ◇争点  日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安産保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う刑事特別法違反で起訴をされた事件です。 ◇判旨  第一審では日本政府がアメリカ軍の駐留を許容したのは指揮権の有無、出動義務の有無にかかわらず、日本国憲法第9条によって禁止される戦力の保持にあたり違憲であり、したがって刑事特別法の罰則は日本国憲法第31条に違反する不合理なものであると判定し、全員無罪の判決を下しました。  しかし最高裁判所判決としては憲法第9条は日本が主権国として持つ固有の自衛権を否定しておらず、同条が禁止する戦力とは日本国が式・管理できる戦力のことであるから国の軍隊は戦力にあたらない、したがって、アメリが軍の駐留は憲法及び全文の趣旨に反しない、他方で日米安全保障条約のように高度な政治性を持つ条約については一見して極めて明白に違憲無効と認められない限りその内容について違憲かどうかの法的判断を下すことはできないとし地方裁判所にもどしています。  最終判決として東京地裁は1961年3月27日は有罪判決をしこの判決につき上告をうけた最高裁は上告棄却を決定しこの有罪判決が確定となりました。
【判例 マクリーン事件 昭和53年10月4日】  アメリカ合衆国国籍を有する原告ロナルド・アラン・マクリーンは1969年に上陸許可をうけ日本に入国し語学英語教師としての許可をうけその滞在中に日米安保条約反対の活動に参加していました。  翌1970年に1年間の在留期間更新の申請をしたところ許可はなされたが活動内容は出国準備期間とされ期間は120日間に短縮され、これを受けマクリーンは在留期間1年を希望して再度在留期間更新申請に及んだが再申請は不許可となりました。そこでマクリーンは法務大臣を被告として処分の取り消しを求めました。 ◇争点  ①日米安保条約反対活動により政治活動への参加  ②外国人の在留期間中に基本的人権の保障が及ぶかどうか ◇判旨  ①基本的人権の保障は権利の性質上日本国民のみをその対象としていると解されるものを除き、我が国に在留する外国人に対しても等しく及ぶ。  ②政治活動の自由についても我が国の政治的意思決定またはその実施に影響を及ぼす活動等外国人の地位にかんがみこれを認めることが相当でないと解されるものを除きその保障が及ぶ。  ③在留期間中の憲法の基本的人権の保障をうける行為を在留期間の更新の際に消極的な事実として斟酌されないことまでの保障が与えられているものと解することはできない。

1-4.基本的人権(国民の権利と義務)

 基本的人権の前提事項として基本的人権の享有、幸福追求権、平等原則があり、この3つを前提として「自由権」「社会権」「受益権」があります。
  • (1)基本的人権の享有
  •  基本的人権は享有されており、享有とは生まれながらにして持っているという意味です。それは国の統治者から与えられているものではなく、生まれながらにして当然にもっており、国の統治者が取り上げるようなことはできません。それは憲法11条に明記がされています。 ■憲法11条  国民はすべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は犯すことのできない永久の権利として現在及び将来の国民に与えられる。
  • (2)幸福追求権
  •  憲法の中では国民の権利としていくつか挙げられているがその前提としてこの憲法13条の幸福追求権により成り立っています。憲法には職業選択の自由は22条で学問の自由が23条、その他プライバシー権、肖像権、自己決定権などこの13条の幸福追求権を根拠として主張することができます。 ■憲法13条  すべて国民は個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求権に対する国民の権利については公共の福祉に反しない限り立法その他の国政の上で最大の尊重を必要とする。
  • (3)平等原則(法の下の平等)
  •  平等原則とは法の下では何人であっても平等であり、犯罪を犯せば差別なく同様に罰せられことを意味しております。これは憲法第14条の憲法第14条 法の下の平等、貴族制度の禁止により明記しています。 ■憲法14条  ①すべて国民は法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分または門地により政治的、経済的または社会的関係において差別されない。  ②華族その他の貴族の生後はこれを認めない。  ③栄誉、勲章その他の栄典の授与はいかなる特権も伴わない。栄典の授与は現にこれを有し、または将来これを受けるものの一代に限りその効力を有する。
    【判例 非嫡出子の法定相続分規定違憲訴訟 平成7年7月5日】 ◇争点  遺産分割審判において非嫡出子については嫡出子である1/2の法定相続分となる民法900条が憲法14条の法の下の平等に反していると主張。 ◇判旨  民法900条は民法が採用している法律婚の尊重と日嫡出子の保護の調整を図ったものであり民法900条の差別には合理的理由があり憲法14条1項に反するものとはいえないとなった。
    【判例 女性の再婚禁止期間の合理性 平成7年12月5日】 ◇事案  Aは前の夫と離婚した2か月御にBと婚姻の届け出をしたが民法733条に違反するとして届出は受理されなかった。そこでAは民法733条が憲法14条に反するとして改正・廃止を行わないことに対し国家賠償法1条の違法行為にあたるとし国家賠償法を請求。 ◇争点  民法733条が憲法14条に違憲 ◇判旨  合理的根拠に基づき手法的取扱いに区別を設けることは民法733条の元来の立法趣旨が父性の推定の重複を回避し父子関係をめぐる紛争の発生を未然にふせぐことがあると解される以上憲法14条1項に違憲ではない。したがって民法733条を改廃しないことが直ちに国家賠償法1条の適用上違法の評価をうけるものではない。  民法第733条 1. 女は、前婚の解消又は取消しの日から六箇月を経過した後でなければ、再婚をすることができない。 2. 女が前婚の解消又は取消の前から懐胎していた場合には、その出産の日から、前項の規定を適用しない。
    【判例 尊属殺重罰規定違憲判決 昭和48年4月4日】 ◇事案  Aが実父からの長年の性的虐待に堪えかねて殺害に及んだ事件であり実父を殺害し憲法200条の尊属殺人罪で起訴されたが、刑法200条(当時)が憲法14条に違憲すると主張。 ◇争点  法200条の尊属殺の法定刑(死刑・無期懲役)が憲法199条の殺人罪の法定刑に比べて著しく不合理であり憲法14条に違憲。 ◇判旨  憲法14条の国民に対し法の下の平等を保障した規定であって、この平等は事柄の性質に即応した合理的根拠に基づくものでない限り差別的な取扱いをすることを禁止する趣旨と解すべきであり、そして尊属に対する尊重は社会生活上の基本的道義というべくこのような自然的情愛ないし普遍的論理の維持は刑法上保護に値するものであるから法律上系の加重要件とする規定を設けてもこのような差別的取扱いをもって直ちに合理的根拠を欠くものと断ずることはできない。しかし加重の程度が極端であって立法目的達成の手段として均衡を失しこれを正当化しうべき根拠を見出しえないときはその差別は著しく不合理と言わざるをえない。刑法200条は尊属札の法定刑を死刑または無期懲役のみに限っている点においてその立法目的達成のための必要限度をはるかに超え普通殺人に関する刑法199条の法定刑に比べて著しく不合理な差別的取扱いをするものと認められ憲法14条に対し無効となり刑法200条は平成7年に条文削除となった。

1-5.自由権

 自由権とは国家に個人の自由を侵害されない権利です。自由権は大きく次の3つに分かれます。
  • (1)精神の自由
  • ■憲法19条 思想および良心の自由
    【判例 謝罪広告強制事件 昭和31年7月4日】 ◇事案  衆議院議員選挙に立候補したAが対立候補Bを中傷したため訴訟となった。判決では民法723条の名誉棄損におけるの現状回復として「ここに陳謝の意を表明します。 という内容の謝罪広告をAに対し命じたがAは謝罪広告は憲法19条思想、良心の自由に違憲すると主張。 ◇争点  謝罪広告が憲法19条に違憲 ◇判旨  謝罪広告を新聞紙等に掲載すべきことを加害者に命ずることはそれが単に事態の真相を告白し陳謝の意を表明するにとどまる程度のもとである限り強制執行をしても加害者の有する論理的な意思、良心の自由を侵害するものではない。
    ■憲法20条 信教の自由
    【判例 宗教法人オウム真理教解散事件 平成8年1月30日】 ◇事案  地下鉄サリン事件を起こした宗教法人オウム真理教に解散命令が出されたが主教法人への解散命令が憲法20条1項に違憲すると主張 ◇争点  宗教法人法81条に基づく宗教法人解散命令が憲法20条に違憲 ◇判旨  大量殺人を目的として計画的、組織的にサリンを生成したオウム真理教に宗教法人法81条により解散命令を出すことは宗教法人の世俗的側面を対象としておりこの行為に対処するにはその法人格を失わせることが必要かつ適切である。解散命令によって宗教団体が何らかの支障を生ずることが避けられないとしても、その支障は解散命令に伴う間接的で事実上のものにとどまるなどの判事の事情のもとにおいては必要でやむを得ない法的規制であり憲法20条に違憲しない。
    【判例】  ・津地鎮祭事件 昭和52年7月13日  ・愛媛県玉串料訴訟 平成9年4月2日  ・内閣総理大臣の靖国神社参拝違憲確認等請求事件 平成18年6月23日
    ■憲法21条 集会・結社及び表現の自由
    【判例 泉佐野市民会館事件 平成7年3月7日】 ◇事案  Aは、空港建設反対集会を開催する為に、Bに対して市民会館の使用許可を申請したが次の3つの理由から泉佐野市民会館条例7条1号「公の秩序をみだすおそれがある場合」及び3号の「その他会館の管理上支障があると認められる場合」に該当するとして不許可処分とした。そこでAはBに対し本件条例7条1号及び3号は、憲法21条1項に違反し、無効であり、また、本件不許可処分は、同項の保障する集会の自由を侵害し、同条2項の禁止する検閲にあたり違憲であり、地方自治法244条に違反すると主張し国家賠償を請求した。  1.本件会館周辺の住民の平穏な生活が脅かされるおそれがあって、公共の福祉に反する。  2.集会参加予定人員が本件集会は全国規模の集会にしては少数である。  3.以前の新空港イベントで混乱があった。 ◇争点  ・泉佐野市民会館条例7条1号及び3号は、憲法21条1項に違憲かどうか。  ・不許可処分は、憲法21条の保障する集会の自由を侵害し、同条2項検閲に当たり、地方自治法244条に違反するかどうか。 ◇判旨  本件条例7条1号は、「公の秩序をみだすおそれがある場合」を本件会館の使用を許可してはならない事由として規定しているが、本件会館における集会の自由を保障することの重要性よりも、対立するグループと暴力による抗争を続けてきたという客観的事実に基づき本件会館で集会が開かれることによって、人の生命、身体又は財産が侵害され、公共の安全が損なわれる危険を回避し、防止することの必要性が優越する場合をいうものと限定して解すべきであり、その危険性の程度として明らかな差し迫った危険の発生が具体的に予見されることが必要であると解するのが相当である。そう解する限り、このような規制は、他の基本的人権に対する侵害を回避し、防止するために必要かつ合理的なものとして、憲法21条に違反するものではなく、また、地方自治法244条に違反するものでもないというべきである。  したがってこのような事実から予測される場合で本件条例7条1号に該当する事由があるとされる場合には、当然に同条3号の「その他会館の管理上支障があると認められる場合」にも該当するものと解するのが相当である。
    ■憲法23条 学問の自由
  • (2)経済の自由
  • ■憲法22条 居住・移転・職業選択の自由、外国移住・国籍離脱の自由 ■憲法24条 家族生活における個人の尊厳と両性の平等 ■憲法29条 財産権
  • (3)人身の自由
  • ■憲法18条 奴隷的拘束および苦役からの自由 ■憲法31条 法定手続きの保障
    【判例 徳島市公安条例事件 昭和50年9月10日】 ◇事案  Aの集団行進が徳島市条例「集団行進及び集団示威運動に関する条例」による「交通秩序を維持すること」に違反したがその文言が一般的、抽象的、多義的であつて、これに合理的な限定解釈を加えることは困難であり、犯罪構成要件の内容として合理的解釈によつて確定できる程度の明確性を備えているといえず、罪刑法定主義の原則に背き憲法三一条に違憲であると主張した。 ◇争点  「交通秩序を維持すること」の文言が犯罪構成要件を備えておらず憲法31条に違憲 ◇判旨  刑法法規が不明確であるがゆえに憲法31条に違憲であると認めるかどうかについては通常判断能力を有する一般人の理解において当該行為がその適用をうけるものかどうかの判断を可能ならしめるような基準がよみとれるかどうかによって決定され禁止される行為とそうでない行為とを識別するための基準を示すところがなく、そのため、その適用を受ける国民に対して刑罰の対象となる行為をあらかじめ告知する機能を果たさず、また、その運用がこれを適用する国又は地方公共団体の機関の主観的判断にゆだねられて恣意に流れる等、重大な弊害を生ずるからであると考えられる。  その行為が秩序正しく平穏に行われる集団行進等に伴う交通秩序の阻害を生ずるにとどまるものか、あるいは殊更な交通秩序の阻害をもたらすようなものであるかを考えることにより、通常その判断にさほどの困難を感じることはないはずである。  確かにその文言が抽象的であるとのそしりを免れないとはいえ、集団行進等における道路交通の秩序遵守についての基準を読みとることが可能であるが犯罪構成要件の内容をなすものとして明確性を欠いている。  しかし本件においては通常の判断能力を有する者の常識において、その避止すべきことを命じている行為に当たると理解しえられるものであることは、疑問の余地がない。  したがって憲法三一条によつて保障される権利を侵害されることにはならないのである。
    ■憲法33条 逮捕の要件 ■憲法34条 抑留・公金の要件、不法拘禁に対する保障 ■憲法35条 住居の不可侵と捜索・押収の要件 ■憲法36条 拷問および残虐刑の禁止 ■憲法37条 刑事被告人の権利 ■憲法38条 自己に不利益な供述の教養禁止、自白の証拠能力 ■憲法39条 訴求処罰の禁止、一事不再理

1-6.社会権

 社会権とは社会的立場で強者と弱者ができてしまい社会的に用語が必要な弱者のために社会権というものが生まれました。  社会権は生存権、教育を受ける権利、労働の権利の3つに分かれます。
  • (1)生存権
  • ■憲法25条 生存権、国の生存権保障義務
  • (2)教育を受ける権利
  • ■憲法26条 教育をうける権利、教育の義務、義務教育の無償
  • (3)労働者の権利
  • ■憲法27条 勤労の権利および義務、勤労条件の基準、児童酷使の禁止 ■憲法28条 勤労者の権利(労働基本権)

1-7.受益権

 受益権は大きく 請願権、裁判を受ける権利、国家賠償法、刑事補償請求権の4つに分けられます。
  • (1)請願権
  • ■憲法16条
  • (2)裁判を受ける権利
  • ■憲法32条 裁判を受ける権利
  • (3)国家賠償請求権
  • ■憲法17条 国家賠償請求権  何人も公務員の不法行為により損害を受けたときは法律の定めるところにより国または公共団体にその賠償を求めることができる。
  • (4)刑事補償請求権
  • ■刑事補償請求権40条  何人も抑留または拘禁された後、無罪の裁判をうけとったときは法律の定めるところにより国にその保障を求めることができる。

1-8.参政権

 参政権とは国民が政治に参加する権利であり、国や公共団体の方向性について政治に参加する権利です。参政権は憲法15条で保障されています。 ■憲法第15条 公務員選定罷免権、公務員の性質、普通選挙の保障、秘密投票の保障
【判例 在宅投票制度廃止違憲訴訟 判例 昭和60年11月21日】 ◇事案  在宅投票制度が昭和23年に採用されたが、制度の悪用を防ぐために昭和27年に法改正を行い廃止された。自宅で寝たきりのAが選挙権行使の権利を奪われたとして 憲法13条 個人の尊重、幸福追求権、憲法14条1項 法の下の平等、貴族制度の禁止、栄典、15条 普通選挙の保障、44条、47条に違憲であり立法の不作為を理由として 国家賠償法1条の違法行為にあたるとし国家賠償法を請求した。 ◇争点  選挙権行使の権利を奪われたとして憲法13条 個人の尊重、憲法14条1項 法の下の平等 15条 普通選挙の保障、44条 議員及び選挙人の資格、47条 選挙に関する事項に違憲であり立法の不作為を理由として国家賠償の適用を主張。 ◇判旨  最高裁判所は国会議員は立法に関して国民全体に関する政治的責任を負うにとどまり、個別の国民の権利に対応した関係で法的義務を負うものではない。 国会議員の立法行為は立法の内容が憲法の一義的な文言に違反しているにも関わらず、国会があえて当該立法行為を行うというような例外的な場合でない限り違法でない。
【判例】 ・三井美唄炭鉱労組事件 判例昭和43年12月4日 ・選挙犯罪者の選挙権・被選挙権の停止 判例昭和30年2月9日

1-9.国民の義務

 国民の義務は憲法では、「教育を受けさせる義務」、「勤労の義務」、「納税の義務」の3つで成り立っています。 ■憲法26条 教育をうける権利、教育の義務、義務教育の無償 ■憲法27条 勤労の義務 ■憲法30条 納税の義務 租税法律主義

日本国憲法

第一章 天皇 ■第1条 天皇の地位、国民主権  天皇は日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であってこの地位は主権の存する日本国民の総意に基づく。 ■第2条 皇位の継承  皇位は世襲のものであって、国会の議決した皇室典範の定めるところによりこれを継承する。 ■第3条 天皇の国事行為に対する内閣の助言と承認  天皇の国事に関するすべての行為には内閣の助言と承認を必要とし内閣がその責任を負う。 ■第4条 天皇の権能の限界 天皇の国事行為の委任  ①天皇はこの憲法の定める告示に関する行為のみを行い国政に関する権能を有しない。  ②天皇は法律の定めるところにより、その国事に関する行為を委任することができる。 ■第5条 摂政  皇室典範の定めるところにより摂政を置くときは摂政は天皇の名でその国事に関する行為を行う。この場合には第4条第一項の規定を準用する。 ■第6条 天皇の任命権 ①天皇は、国会の使命に基づいて内閣総理大臣を任命する。 ②天皇は内閣の使命に基づいて最高裁判所の調たる裁判官を任命する。 ■第7条 天王の国事行為 天皇は内閣の助言と承認により、国民のために次の国事に関する行為を行う。  ①憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。  ②国会を召集すること。  ③衆議院を解散すること。  ④国会議員の総選挙の施行を工事すること。  ⑤国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免並びに全権委任状及び大使及び行使の信任状を認証すること。  ⑥代謝、特赦、原型、系の執行の免除及び復権を認証すること。  ⑦栄典を授与すること。  ⑧批准書および法律の定めるその他の外交文書を認証すること。  ⑨外国の対し及び行使を接受すること  ⑩儀式を行うこと ■第8条 皇室の財産授受  皇室の財産を譲りわたしまたは皇室が財産を譲り受け、もしくは賜与することは国会の議決に基づかなければならない。 ■憲法9条 戦争の放棄、戦力の不保持および交戦権の否認 ①日本国民は正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し国権の発動たる戦争と武力による威嚇又は武力の行使は国際紛争を解決する手段としては永久にこれを放棄する。 ②前項の目的を達するため陸海空軍その他の戦力はこれを保持しない。国の交戦権はこれを認めない。 【判例 砂川事件 昭和34年12月16日】 砂川事件は東京都北多摩郡砂川町のアメリカ軍の立川基地拡張に対する反対運動をめぐる一連の事件です。 ◇争点 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安産保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う刑事特別法違反で起訴をされた事件です。 ◇判旨  第一審では日本政府がアメリカ軍の駐留を許容したのは指揮権の有無、出動義務の有無にかかわらず、日本国憲法第9条によって禁止される戦力の保持にあたり違憲であり、したがって刑事特別法の罰則は日本国憲法第31条に違反する不合理なものであると判定し、全員無罪の判決を下しました。しかし最高裁判所判決としては憲法第9条は日本が主権国として持つ固有の自衛権を否定しておらず、道場が禁止する戦力とは日本国が式・管理できる戦力のことであるから外国の軍隊は戦力にあたらない、したがって、アメリが軍の駐留は憲法及び全文の趣旨に反しない、他方で日米安全保障条約のように高度な政治性を持つ条約については一見して極めて明白に違憲無効と認められない限りその内容について違憲かどうかの法的判断を下すことはできないとし地方裁判所にもどしています。最終判決として東京地裁は1961年3月27日は有罪判決をしこの判決につき上告をうけた最高裁は上告棄却を決定しこの有罪判決が確定となりました。 【判例 マクリーン事件 昭和53年10月4日】 アメリカ合衆国国籍を有する原告ロナルド・アラン・マクリーンは1969年に上陸許可をうけ日本に入国し語学英語教師としての許可をうけその滞在中に日米安保条約反対の活動に参加していました。翌1970年に1年間の在留期間更新の申請をしたところ許可はなされたが活動内容は出国準備期間とされ期間は120日間に短縮され、これを受けマクリーンは在留期間1年を希望して再度在留期間更新申請に及んだが再申請は不許可となりました。そこでマクリーンは法務大臣を被告として処分の取り消しを求めました。 ◇争点 ①日米安保条約反対活動により政治活動への参加 ②外国人の在留期間中に基本的人権の保障が及ぶかどうか ◇判旨 ①基本的人権の保障は権利の性質上日本国民のみをその対象としていると解されるものを除き、我が国に在留する外国人に対しても等しく及ぶ。 ②政治活動の自由についても我が国の政治的意思決定またはその実施に影響を及ぼす活動等外国人の地位にかんがみこれを認めることが相当でないと解されるものを除きその保障が及ぶ。 ③在留期間中の憲法の基本的人権の保障をうける行為を在留期間の更新の際に消極的な事実として斟酌されないことまでの保障が与えられているものと解することはできない。 ■憲法10条 日本国民の要件  日本国民たる要件は、法律でこれを定める。 ■憲法11条 基本的人権の享有  国民はすべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は犯すことのできない永久の権利として現在及び将来の国民に与えられる。 ■憲法12条 自由・権利の保持の責任とその濫用の禁止  この憲法が国民に保障する自由および権利は国民の不断の努力によってこれを保持しなければならない。また。国民はこれを濫用してはならないのであって常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負う。 ■憲法13条 個人の尊重、幸福追求権、公共の福祉 すべて国民は個人として尊重される。生命、自由および幸福追求に対する国民の権利については公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政のうえで、最大の尊重を必要とする。 【判例 喫煙禁止違憲訴訟 昭和45年9月16日】 【事案・争点】 禁煙の監獄で受刑者が喫煙を求めたが喫煙の自由は制限するとされ憲法13条幸福追求権に違憲であると主張 【判旨】 監獄内での喫煙による火災発生、それに乗じて逃亡の恐れがある。タバコは嗜好品にすぎず受刑者に対し喫煙禁止制限は合理的制限であり憲法13条に違憲しない。 【判例】 ・指紋押捺事件 平成7年12月15日 ・京都府学連事件 昭和44年12月24日 ・写真週刊誌に対する損害賠償請求権事件 平成17年11月10日 ・自動速度監視装置による写真撮影の合憲性 昭和61年2月14日 ・前科照会事件 昭和56年4月14日 ・エホバの証人不同意輸血損害賠償事件 平成12年2月29日 ■憲法第14条 法の下の平等、貴族制度の禁止、栄典  ①すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分または門地により、政治的、経済的または社会的関係において、差別されない。  ②華族その他の帰属の制度はこれを認めない。  ③栄誉、勲章その他の栄転の授与はいかなる特権も伴わない。栄典の授与は現にこれを有し、または将来これを受けるものの一大に限り、その効力を有する。 【判例 非嫡出子の法定相続分規定違憲訴訟 平成7年7月5日】 ◇争点  遺産分割審判において非嫡出子については嫡出子である1/2の法定相続分となる民法900条が憲法14条の法の下の平等に反していると主張。 ◇判旨 民法900条は民法が採用している法律婚の尊重と日嫡出子の保護の調整を図ったものであり民法900条の差別には合理的理由があり憲法14条1項に反するものとはいえないとなった。 【女性の再婚禁止期間の合理性 平成7年12月5日】 ◇事案   Aは前の夫と離婚した2か月御にBと婚姻の届け出をしたが民法733条に違反するとして届出は受理されなかった。 そこでAは民法733条が憲法14条に反するとして改正・廃止を行わないことに対し国家賠償法1条の違法行為にあたるとし国家賠償法を請求。 ◇争点 民法733条が憲法14条に違憲 ◇判旨 合理的根拠に基づき手法的取扱いに区別を設けることは民法733条の元来の立法趣旨が父性の推定の重複を回避し父子関係をめぐる紛争の発生を未然にふせぐことがあると解される以上憲法14条1項に違憲ではない。 したがって民法733条を改廃しないことが直ちに国家賠償法1条の適用上違法の評価をうけるものではない。 民法第733条 1. 女は、前婚の解消又は取消しの日から六箇月を経過した後でなければ、再婚をすることができない。 2. 女が前婚の解消又は取消の前から懐胎していた場合には、その出産の日から、前項の規定を適用しない。 【判例 尊属殺重罰規定違憲判決 昭和48年4月4日】 ◇事案 Aが実父からの長年の性的虐待に堪えかねて殺害に及んだ事件であり実父を殺害し憲法200条の尊属殺人罪で起訴されたが、刑法200条(当時)が憲法14条に違憲すると主張。 ◇争点 憲法200条の尊属札の法定刑(死刑・無期懲役)が憲法199条の殺人罪の法定刑に比べて著しく不合理であり憲法14条に違憲。 ◇判旨 憲法14条の国民に対し法の下の平等を保障した規定であって、この平等は事柄の性質に即応した合理的根拠に基づくものでない限り差別的な取扱いをすることを禁止する趣旨と解すべきであり、そして尊属に対する尊重は社会生活上の基本的道義というべくこのような自然的情愛ないし普遍的論理の維持は刑法上保護に値するものであるから法律上系の加重要件とする規定を設けてもこのような差別的取扱いをもって直ちに合理的根拠を欠くものと断ずることはできない。 しかし加重の程度が極端であって立法目的達成の手段として均衡を失しこれを正当化しうべき根拠を見出しえないときはその差別は著しく不合理と言わざるをえない。 刑法200条は尊属札の法定刑を死刑または無期懲役のみに限っている点においてその立法目的達成のための必要限度をはるかに超え普通殺人に関する刑法199条の法定刑に比べて著しく不合理な差別的取扱いをするものと認められ憲法14条に対し無効となり刑法200条は平成7年に条文削除となった。 ■憲法第15条 公務員選定罷免権、公務員の性質、普通選挙の保障、秘密投票の保障 ①公務員を選定しおよびこれを罷免することは国民固有の権利である。 ②すべて公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない。 ③公務員の選挙については成年者による普通選挙を保障する。 ④すべて選挙における投票の秘密はこれを侵してはならない。選挙人は、その選択に関し公的にも私的にも責任を問われない。 【判例】 ・三井美唄炭鉱労組事件 判例昭和43年12月4日 ・選挙犯罪者の選挙権・被選挙権の停止 判例昭和30年2月9日 ■憲法16条 請願権 何人も損害の救済、公務員の罷免、法律、命令または規則の制定、廃止または改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、何人もかかる請願したためにいかなる差別待遇も受けない。 ■憲法17条 国および公共団体の賠償責任 何人も公務員の不法行為により、損害を受けた時は法律の定めるところにより、国または公共団体にその賠償を求めることができる。 ・郵便法違憲判決 判例平成14年9月11日 ■憲法18条 奴隷的拘束および苦役からの自由 何人もいかなる奴隷的拘束も受けない。また、犯罪による処罰の場合を除いてはその意に反する苦役に服させられない。 ■憲法19条 思想および良心の自由 思想及び良心の自由はこれを侵してはならない。 【判例 謝罪広告強制事件 昭和31年7月4日】 ◇事案 衆議院議員選挙に立候補したAが対立候補Bを中傷したため訴訟となった。判決では民法723条の名誉棄損におけるの現状回復として「ここに陳謝の意を表明します。」 という内容の謝罪広告をAに対し命じたがAは謝罪広告は憲法19条思想、良心の自由に違憲すると主張。 ◇争点 謝罪広告が憲法19条に違憲 ◇判旨 謝罪広告を新聞紙等に掲載すべきことを加害者に命ずることはそれが単に事態の真相を告白し陳謝の意を表明するにとどまる程度のもとである限り強制執行をしても 加害者の有する論理的な意思、良心の自由を侵害するものではない。 ■憲法20条 信教の自由 ①信教の自由は何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、または政治上の権力を行使してはならない。 ②何人も、宗教上の行為、祝典、儀式または行事に参加することを強制されない。 ③国およびその期間は宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。 【判例 宗教法人オウム真理教解散事件 平成8年1月30日】 ◇事案 地下鉄サリン事件を起こした宗教法人オウム真理教に解散命令が出されたが主教法人への解散命令が憲法20条1項に違憲すると主張 ◇争点 宗教法人法81条に基づく宗教法人解散命令が憲法20条に違憲 ◇判旨 大量殺人を目的として計画的、組織的にサリンを生成したオウム真理教に宗教法人法81条により解散命令を出すことは宗教法人の世俗的側面を対象としておりこの行為に対処するにはその法人格を失わせることが必要かつ適切である。解散命令によって宗教団体が何らかの支障を生ずることが避けられないとしても、その支障は解散命令に伴う間接的で事実上のものにとどまるなどの判事の事情のもとにおいては必要でやむを得ない法的規制であり憲法20条に違憲しない。 【判例】 ・津地鎮祭事件 昭和52年7月13日 ・愛媛県玉串料訴訟 平成9年4月2日 ・内閣総理大臣の靖国神社参拝違憲確認等請求事件 平成18年6月23日 ■憲法21条 集会・結社・表現の自由・検閲の禁止・通信の秘密  ①集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由はこれを保障する。  ②検閲はこれをしてはならない。通信の秘密はこれを侵してはならない。 【判例 泉佐野市民会館事件 平成7年3月7日】 ◇事案  Aは、空港建設反対集会を開催する為に、Bに対して市民会館の使用許可を申請したが次の3つの理由から泉佐野市民会館条例7条1号「公の秩序をみだすおそれがある場合」及び3号の「その他会館の管理上支障があると認められる場合」に該当するとして不許可処分とした。そこでAはBに対し本件条例7条1号及び3号は、憲法21条1項に違反し、無効であり、また、本件不許可処分は、同項の保障する集会の自由を侵害し、同条2項の禁止する検閲にあたり違憲であり、地方自治法244条に違反すると主張し国家賠償を請求した。  1.本件会館周辺の住民の平穏な生活が脅かされるおそれがあって、公共の福祉に反する。  2.集会参加予定人員が本件集会は全国規模の集会にしては少数である。  3.以前の新空港イベントで混乱があった。 ◇争点  ・泉佐野市民会館条例7条1号及び3号は、憲法21条1項に違憲かどうか。  ・不許可処分は、憲法21条の保障する集会の自由を侵害し、同条2項検閲に当たり、地方自治法244条に違反するかどうか。 ◇判旨  本件条例7条1号は、「公の秩序をみだすおそれがある場合」を本件会館の使用を許可してはならない事由として規定しているが、本件会館における集会の自由を保障することの重要性よりも、対立するグループと暴力による抗争を続けてきたという客観的事実に基づき本件会館で集会が開かれることによって、人の生命、身体又は財産が侵害され、公共の安全が損なわれる危険を回避し、防止することの必要性が優越する場合をいうものと限定して解すべきであり、その危険性の程度として明らかな差し迫った危険の発生が具体的に予見されることが必要であると解するのが相当である。そう解する限り、このような規制は、他の基本的人権に対する侵害を回避し、防止するために必要かつ合理的なものとして、憲法21条に違反するものではなく、また、地方自治法244条に違反するものでもないというべきである。  したがってこのような事実から予測される場合で本件条例7条1号に該当する事由があるとされる場合には、当然に同条3号の「その他会館の管理上支障があると認められる場合」にも該当するものと解するのが相当である。 ■憲法22条 居住・移転・職業選択の自由、外国移住・国籍離脱の自由 ①何人も、経協の福祉に反しない限り、居住、移転、および職業選択の自由を有する。 ②何人も、外国に移住し、または国籍を離脱する自由を侵されない。 ■憲法23条 学問の自由  学問の自由は、これを保障する。 ■憲法24条 家族生活における個人の尊厳と両性の平等 ①婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。 ②配偶者の選択、財産権。相続、居住の選定、離婚ならびに婚姻および家族に関するその他の事項に関しては法律は個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して制定されなければならない。 ■憲法25条 生存権、国の生存権保障義務 ①すべて国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。 ②国はすべての生活部面について、社会福祉、社会保障および公衆衛生の向上および増進に努めなければならない。 ■憲法26条 教育をうける権利、教育の義務、義務教育の無償 ①すべて国民は法律の定めるところにより、その能力に応じて等しく教育を受ける権利を有する。 ②すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女にふつう教育を受けさせる義務を負う。義務教育はこれを無償とする。 ■憲法27条 勤労の権利および義務、勤労条件の基準、児童酷使の禁止 ①すべて国民は勤労の権利を有し、義務を負う。 ②賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は法律でこれを定める。 ③児童はこれを酷使してはならない。 ■憲法28条 勤労者の権利(労働基本権) 勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利はこれを保障する。 ■憲法29条 財産権 ①財産権はこれを、侵してはならない。 ②財産権の内容は、公共の福祉に適合するように法律でこれを定める。 ③私有財産は正当な保障の下にこれを公共の為に用いることができる。 ■憲法30条 納税の義務  国民は法律の定めるところにより、納税の義務を負う ■憲法31条 法定手続の保障  何人も法律の定める手続きによらなければその生命もしくは自由を奪われ、またはその他の刑罰を科されない。 【判例 徳島市公安条例事件 昭和50年9月10日】 ◇事案  Aの集団行進が徳島市条例「集団行進及び集団示威運動に関する条例」による「交通秩序を維持すること」に違反したがその文言が一般的、抽象的、多義的であつて、 これに合理的な限定解釈を加えることは困難であり、犯罪構成要件の内容として合理的解釈によつて確定できる程度の明確性を備えているといえず、罪刑法定主義の原則に背き憲法三一条に違憲であると主張した。 ◇争点 「交通秩序を維持すること」の文言が犯罪構成要件を備えておらず憲法31条に違憲 ◇判旨 刑法法規が不明確であるがゆえに憲法31条に違憲であると認めるかどうかについては通常判断能力を有する一般人の理解において当該行為がその適用をうけるものかどうかの判断を可能ならしめるような機銃がよみとれるかどうかによって 決定され禁止される行為とそうでない行為とを識別するための基準を示すところがなく、そのため、その適用を受ける国民に対して刑罰の対象となる行為をあらかじめ告知する機能を果たさず、また、その運用がこれを適用する国又は地方公共団体の 機関の主観的判断にゆだねられて恣意に流れる等、重大な弊害を生ずるからであると考えられる。 その行為が秩序正しく平穏に行われる集団行進等に伴う交通秩序の阻害を生ずるにとどまるものか、あるいは殊更な交通秩序の阻害をもたらすようなものであるかを考えることにより、通常その判断にさほどの困難を感じることはないはずである。 確かにその文言が抽象的であるとのそしりを免れないとはいえ、集団行進等における道路交通の秩序遵守についての基準を読みとることが可能であるが犯罪構成要件の内容をなすものとして明確性を欠いている。 しかし本件においては通常の判断能力を有する者の常識において、その避止すべきことを命じている行為に当たると理解しえられるものであることは、疑問の余地がない。したがって憲法三一条によつて保障される権利を侵害されることにはならないのである。 ■憲法32条 裁判を受ける権利 何人も裁判所において裁判を受ける権利を奪われない。 ■憲法33条 逮捕の要件 何人も現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、かつ理由となっている犯罪を明示する礼状によらなければ逮捕されない。 ■憲法34条 抑留・公金の要件、不法拘禁に対する保障 何人も理由を田立に告げられ、かつ直ちに弁護人に依頼する権利を与えられなければ抑留または拘禁されない。また何人も正当な理由がなければ後期金されず、要求があれば、その理由は、ただちに本人およびその弁護人の出席する公開の法定で示さなければならない。 ■憲法35条 住居の不可侵と捜索・押収の要件 ①何人もその居住、書類および所持品について侵入、捜索および押収もうけることのない権利は第33条の場合を除いては正当な理由にもとづいて発せられ、かつ捜索する場所および押収するものを明示する令状がなければ、侵されない。 ②捜索または押収は、権限を有する司法官憲が発する格別の令嬢によりこれを行う。 ■憲法36条 拷問および残虐刑の禁止 公務員による拷問および残虐な刑罰は絶対にこれを禁ずる。 ■憲法37条 刑事被告人の権利 ①すべて刑事事件においては被告人は公平な裁判所の迅速な公開裁判をうける権利を有する。 ②刑事被告人はすべての証人に対して尋問する機会を充分に与えられ、また公費で自己のために強制的手続きにより証人を求める権利を有する。 ③刑事被告人はいかなる場合にも資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは国でこれを附する。 ■憲法38条 自己に不利益な供述の教養禁止、自白の証拠能力 ①何人も自己に不利益な供述を強要されない。 ②強制、拷問もしくは脅迫による自白または不当に長く抑留もしくは拘禁された後の自白はこれを証拠とすることができない。 ③何人も自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされまたは刑罰を科せられない。 ■憲法39条 訴求処罰の禁止、一事不再理  何人も、実行の時に適法であった行為または既に無罪とされた行為については、形而上の責任を問われない。また同一の犯罪について、重ねて形而上の責任を問われない。 ■憲法40条 刑事補償  何人も、抑留または拘禁されたあと無罪の裁判を受けた時は、法律の定めるところにより、国にその保障を求めることができる。 ■憲法41条 国会の地位、立法権  国会は国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である。 ■憲法42条 両院性  国会は、衆議院および参議院の両議院でこれを構成する。 ■憲法43条 両議院の組織  ①両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。  ②両議院の議員の呈するは、法律でこれを定める。 ■憲法44条 議員及び選挙人の資格  両議院の議員およびその選挙人の資格は、法律でこれを定める。ただし、人種、信条、性別、社会的身分、門地、教育、財産または収入によって差別してはならない。 ■憲法45条 衆議院議員の任期  衆議院議員の任期は4年とする。ただし、衆議院解散の場合には、その期間満了前に終了する。 ■憲法46条 衆議院議員の任期  参議院議員の任期は6年とし、3年ごとに議員の半数を改選する。 ■憲法47条 選挙に関する事項  選挙区、投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は法律でこれを定める。 ■憲法48条 両議院議員兼職の禁止  何人も、同時に両議院の議員たることはできない。 ■憲法49条 議員の歳費 両議院の議員は、法律の定めるところにより、国庫から相当額の歳費を受ける。 ■憲法50条 議員の不逮捕特権  両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会議中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議員の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない。 ■憲法51条 議員の発言・議決の無責任  両議院の議員は議員で行った演説、討論または評決について、院外で責任を問われない。 ■憲法52条 常会  国会の常会は毎年一回これを召集する。 ■憲法53条 臨時会  内閣は、国会の臨時会の招集を決定することができる。いずれかの議員の総議員の4分の1以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。 ■憲法54条 衆議院の解散、特別会、参議院の緊急集会  ①衆議院が解散された時は、解散の日から40日以内に、衆議院議員の総選挙を行い、その選挙の日から30日以内に、国会を召集しなければならない。  ②衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。ただし、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる。  ③前項ただし書の緊急集会においてとられた措置は、臨時のものであって、次の国会開会の後10日以内に、衆議院の同意がない場合には、その効力を失う。 ■憲法55条 資格訴訟の裁判  両議院は、各々その議員の資格に関する訴訟を裁判する。ただし、議員の議席を失わせるには、出席議員の3分の2以上の多数による議決を必要とする。 ■憲法56条 定足数、表決  ①両議院は各々その争議委員の3分の1以上の出席がなければ議事を開き議決することができない。  ②両議院の議事は、この憲法に特別の定めのある場合を除いては、出席議員の過半数でこれを決し、可否同数の時は、議長の決するところによる。 ■憲法57条 会議の公開、会議録、表決の記載  ①両議院の会議は、公開とする。ただし、出席議員の3分の2以上の多数で議決したときは、秘密会を開くことができる。  ②両議院は、各々その会議の記録を保存し、秘密会の記録の中で特に秘密会を要すると認められるもの以外はこれを公表し、かつ一般に頒布しなければならない。  ③出席議員の5分の1以上の要求があれば、各議員の表決は、これを会議録に記載しなければならない。 ■憲法58条 役員の選任、議員規則、懲罰  ①両議院は、各々その議長その他の役員を選任する。  ②両議院は、各々その会議その他の手続及び内部の規律に関する規則を定め、また、院内の秩序を乱した議員を懲罰することができる。ただし、議員を除名するには出席議員の3分の2以上の多数による議決を必要とする。 ■憲法第59条 法律案の議決、衆議院の優越 ①法律案は、この憲法に特別の定めのある場合を除いては、両議院で可決したときに法律となる。 ②衆議院で可決し、参議院でこれと異なった議決をした法律案は、衆議院で出席議員の3分の2以上の多数で再び可決したときは、法律となる。 ③前項の規定は、法律の定めるところにより、衆議院が、両議院の協議会を開くことを求めることを妨げない。 ④参議院が、衆議院の可決した法律案を受け取った後、国会休会中の期間を除いて60日以内に、議決しないときは、衆議院は、参議院がその法律案を否決したものとみなすことができる。 ■憲法第60条 衆議院の予算先議と優越 ①予算はさきに衆議院に提出しなければならない。 ②予算について、参議院で衆議院と異なった議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は参議院が、衆議院の可決した予算を受け取った後、国会休会中の期間を除いて30日以内に、議決しないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。 ■憲法第61条 条約の国会承認と衆議院の優越 条約の締結に必要な国会の承認については、前条第2項の規定を準用する。 ■憲法第62条 議員の国政調査権 両議院は、各々国政に関する調査を行い、これに関して、証人の出頭及び記録の提出を要求することができる。 ■憲法第63条 国務大臣の議員出席 内閣総理大臣その他の国務大臣は、両議院の一に議席を有すると有しないとにかかわらず、いつでも議案について発言するため議員に出席することができる。又、答弁又は説明のため出席を求められたときは、出席しなければならない。 ■憲法第64条 弾劾裁判所 ①国会は罷免の訴追をうけた裁判官を裁判するため、両議院の議員で組織する弾劾裁判所を設ける。 ②弾劾に関する事項は法律でこれを定める。 ■憲法第65条 行政権と内閣 行政権は、内閣に属する。 ■憲法第66条 内閣の組織 ①内閣は、法律の定めるところにより、その首長たる内閣総理大臣及びその他の国務大臣でこれを組織する。 ②内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない。 ③内閣は行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負う。 ■憲法第67条 内閣総理大臣の氏名、衆議院の優越 ①内閣総理大臣は、国会議員の仲から国会の議決でこれを指名する。この指名は、他のすべての案件に先立って、これを行う。 ②衆議院と参議院とが異なった指名の議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は衆議院が指名の議決をした後、国会休会中の期間を除いて10日以内に、参議院が、指名の議決をしないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。 ■憲法第68条 国務大臣の任免 ①内閣総理大臣は、国務大臣を任命する。但し、その過半数は、国会議員の中から選ばれなければならない。 ②内閣総理大臣は、任意に国務大臣を罷免することができる。 ■憲法第69条 衆議院の内閣不信任 内閣は、衆議院で不信任の決議をしたときは、10日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。 ■憲法第70条 内閣総理大臣の欠けつ又は総選挙後の総辞職 内閣総理大臣がかけたとき、又は衆議院議員総選挙の後に始めて国会の収集があったときは、内閣は、総辞職をしなければならない。 ■憲法第71条 総辞職後の内閣の職務 前二条の場合には、内閣は、あらたに内閣総理大臣が任命されるまで引き続きその職務を行う。 ■憲法第72条 内閣総理大臣の職務、 内閣総理大臣は、内閣を代表して議案を国会に提出し、一般国務及び外交関係について国会に報告し、ならびに行政各部に指揮監督する。 ■憲法第73条内閣の事務 内閣は他の一般行政事務のほか、左の事務を行う。 一 外交関係を処理すること。 二 外交関係を処理すること 三 条約を締結すること。但し、事前に、時宜によっては事後に、国会の承認を経ることを必要とする。 四 法律の定める基準に従い、官吏に関する事務を掌理すること。 五 予算を作成して国会に提出すること。 六 この憲法及び法律の規定を実施するために政令を制定すること。但し、政令には、得にその法律の委任がある場合を除いては、罰則をもうけることができない。 七 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を決定すること。 ■憲法第74条 法律・政令の署名・連署 法律及び政令には、すべて主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署することを必要とする。 ■憲法第75条 国務大臣の訴追 国務大臣は、その在任中、内閣総理大臣の同意がなければ、追訴されない。但しこれがため、追訴の権利は害されない。 第6章 司法 ■憲法第76条 司法権、裁判所、特別裁判所の禁止、裁判官の独立 ①すべて司法権は、最高裁判所及び法律のさだめるところにより設置する下級裁判所に属する。 ②特別裁判所は、これを設置することができない。行政機関は、終身として裁判を行うことができない。 ③すべて裁判官は、その良心に従い独立してその職権を行い、この憲法及び法律にのみ拘束される。 ■憲法第77条 裁判所の規則制定権 ①最高裁判所は訴訟に関する手続き、弁護士、裁判所の内部規律及び司法事務処理に関する事項について、驥足を定める権限を有する。 ②検察官は、最高裁判所の定める規則にしたがわなければならない。 ③最高裁判所は、下級裁判所に関する規則を定める権限を、下級裁判所に委任することができる。 ■憲法第78条 裁判官の身分保障 裁判官は、裁判により心身故障のために職務を取ることができないと決定された場合をのぞいては、公の弾劾によらなければ罷免されない。裁判官の懲戒処分は、行政機関がこれを行うことはできない。 ■憲法第79条 最高裁判所の構成等 ①最高裁判所は、その調達裁判官の及び法律の定める員数のそのほかの裁判官でこれを構成し、その調達裁判官以外の裁判官は、内閣でこれを任命する。 ②最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後はじめて行われる衆議院議員選挙の際国民の審査に付し、その後10年を経過した後はじめて行われる衆議院議員総選挙の際更に審査に付し、その後も同様とする。 ■憲法第80条 下級裁判所の裁判官、任期、定年、報酬 ①下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によって、内閣でこれを任命する。その裁判官は人気を10年とし、再任されることができる、ただし、法律の定める年齢に達したときには退官する。 ②下級裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける、。この報酬は、在任中、これを減額することができない。 【判例】 ・国民審査制度の法的性格 昭和27年2月20日 ■憲法第81条 違憲審査権 最高裁判所は一切の法律、命令、規則または処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終身裁判所である。 【判例】 ・警察予備隊違憲訴訟 昭和27年10月8日 ・下級裁判所の違憲審査権 昭和25年2月1日 ・都教組事件 昭和44年4月 2日 ■憲法第82条 裁判の公開 ①裁判の対審及び判決は公開法廷でこれを行う。 ②裁判所が裁判官の全員一致で、公の秩序または善良の風俗を害する虞があると決した場合には、対審は公開しないでこれを行うことができる。ただし政治犯罪、出版に関する犯罪またはこの憲法第三章で保障する国民の権利が問題となっている事件の対審は、常にこれを公開しなければならない。 【判例】 ・レペタ訴訟 平成元年3月8日 ・家事審判法による審判の合憲性 昭和40年6月30日 第7章 財政 ■憲法83条 財政処理の基本原則 国の財政を処理する権限は、国会の議決に基づいて、これおを行使しなければならない。 ■憲法第84条 課税 あらたに租税を課し、または現行の租税を変更するには、法律または法律の定める条件によることを必要とする。 【判例】 ・国民健康保険料賦課処分取消等請求事件 平成18年3月1日 ■憲法第85条 国費の支出および国の債務負担 国費を支出し、または国が債務を負担するには、国会の議決にもとづくことが必要とする。 ■憲法第86条 予算 内閣は、真会計年度の予算おw作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない。 ■憲法第87条 予備費 ①予見しがたい予算の不足に充てるため、国会の議決に基づいて予備費を設け、内閣の責任でこれを支出することができる。 ②すべて予備費の支出については、内閣は、事後に国会の承諾を得なければならない。 ■憲法第88条 皇室財産・皇室の費用 すべて皇室財産は、国に属する。すべて皇室の費用は予算に計上して国会の議決を経なければならない。 ■憲法第89条 公の財産の支出または利用の制限 拘禁その他の公の財産は、宗教上の組織もしくは団体の仕様、便益もしくは維持のため、または公の支配に属しない慈善、教育もしくは博愛の事業に対し、これを支出しまたはその利用に供してはならない。 【判例】 ・公の支配の意義 平成2年1月29日 ■憲法第90条 決算検査、会計検査院 ①国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は次の年度に、その検査報告とともにこれを国会に提出しなければならない。 ②会計検査院の組織及び権限は、法律でこれを定める。 ■憲法第91条 財政状況の報告 内閣は、国会及び国民に対し、定期に、少なくとも毎年1回、国の財政状況について報告しなければならない。 第8章 地方自治法 ■憲法第92条 地方自治の基本原則 地方公共団体の組織および運営に関する事項は地方自治の本旨に基づいて法律でこれを定める。 ■憲法第93条 地方公共団体の機関、その直接選挙 ①地方公共団体には、法律の定めるところにより、その議事機関として議会を設置する。 ②地方公共団体の長、その議会の議員および法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する。 【判例】 ・憲法上の地方公共団体 昭和38年3月27日 ■憲法第94条 地方公共団体の権能 地方公共団体は、その財産を管理事務を処理し、および行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。 【判例】 ・憲法の法律留保事項と条例 憲法31条と条例 昭和37年5月30日 ■憲法第95条 特別法の住民投票 一の地方公共団体のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共団体の住民投票においてその過半数の同意を得なければ、国会は、これを制定することができない、 第9章 改正 ■憲法第96条 改正の手続き、その公布 ①この憲法の改正は、各議員の総議員の3分の2以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民陶業または国会の定める選挙の際行われる投票において、その過半数の賛成を必要とする。 ②憲法改正について前項の証人を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体をなすものとして、ただちにこれを公布する。 第10章 最高法規 ■憲法97条 この憲法が日本国民に保障する基本的人権は人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であって、これらの権利は過去いくたの試練に堪え、現在及び将来の国民に対し犯すことのできない永久の権利として信託されたものである。 ■憲法第98条 最高法規、条約及び国際法規の順守 ①この憲法は、国の最高法規であって、その条規に反する法律、命令、詔勅および国務に関するその他の行為の全部または一部は、その効力を有しない、 ②日本国が締結した条約および確立された国際法規は、これを誠実に順守することを必要とする。 ■憲法99条 憲法尊重擁護の義務 天皇または摂政および国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負う。 第11章 補足 ■憲法第100条 憲法の施工期日、準備手続き ①この憲法は公布の日から起算して6か月を経過した日から、これを施行する。 ②この憲法を施行するために必要な法律の制定、参議院議員の選挙及び国会収集の手続並びにこの憲法を施行するために必要な準備手続きは、前項の期日よりも前にこれを行うことができる。 ■憲法101条 経過規定―参議院未成立の間の国会 この憲法施行の際、参議院がまだ成立していないときは、その成立するまでの間、衆議院は国会としての権限を行う。 ■憲法第102条 同前―第一期の参議院議員の任期 この憲法による第一期の参議院議員のうち、その半数の者の任期は、これを3年とする。その議員は、法律の定めるところにより、これを定める。 ■憲法第103条 同前―公務員の地位 この憲法施行の際現に在職する国務大臣、衆議院議員および裁判官ならびにその他の公務員で、その地位に相応する地位がこの憲法で認められているものは、法律で特別の定めをした場合を除いては、この憲法施行のため、当然にはその地位を失うことはない、ただし、この憲法によって、後任者が選挙または任命された時は当然その地位を失う。