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犯罪被害者基本法

1.犯罪被害者基本法とは

 犯罪被害者基本法は2004年12月に犯罪被害者団体、犯罪被害者支援団体等の強い要請を受けて成立し2005年4月に施行されました。 日本の犯罪被害者支援運動は1991年10月に開催された犯罪被害者給付制度発足10周年記念シンポジウムにより犯罪被害者についての実態調査を経て同年東京医科歯科大学に犯罪被害者相談質が開設されたことが大きな転機となっています。  その後日本弁護士連合会は1997年4月に犯罪被害回復制度等検討協議会を設置して犯罪被害支援に関しての活動を開始、1999年から弁護士会に犯罪被害者相談センターが設置されて弁護士が犯罪被害者の法律相談、法的手続きの相談を応じる体制を整えています。 更に2000年1月23日に開催された第1回シンポジウム犯罪被害者の権利が何一つ守られていないことを痛感して「犯罪被害者の会」が結成されたことをきっかけとして2004年に犯罪被害者基本法設立によって犯罪被害者支援の法的基礎が作られることとなりました。  犯罪被害者の要綱は国の犯罪被害者対策の基本方針を定めたものであり、犯罪被害者等のための施策を総合的かつ計画的に推進し、もって犯罪被害者等の権利利益の保護を図ることを目的とし、犯罪被害者等への生活支援に関連する規定、刑事司法に関連する規定、および国民の理解と犯罪被害者支援活動に関連する規定を定めています。 基本理念には第3条にあるように、①個人の尊厳と相応の処遇の保障、②犯罪被害者の状況に応じた適切な施策の実施 ③平穏な生活を営むまでの必要な支援措置の実施の理念によって成り立っています。  近年の犯罪被害者支援センター電話相談では性犯罪被害者が約3割を占めているといわれていますが、強姦被害者は心身ともに深刻な被害を被っているケースが多く、事件後にPTSD(心的外傷後ストレス障害)、ASD(急性ストレス障害)を発症することが多いようです。 更に殺人被害者についても心身に加え財産上に深刻な被害を被っており十分な時間をかけて事実関係を聴取するとともに専門家との連携、刑事司法の整備等と生活支援が犯罪被害者には必要です。  また周囲の方々は犯罪被害者等の名著、又は生活の平穏を害することのないよう十分配慮するとともに、国及び地方公共団体が実施する犯罪被害者等のための施策に協力するよう努めなければならないことも犯罪被害者基本法では定めています。

1.犯罪被害者基本法の構成

 犯罪被害者基本法は全3章30条の構成となっています。
  • 第一章 総則 目的・定義・基本理念 国の責務・国民の責務・犯罪被害者等基本計画立案等
  • 第二章 基本的施策 犯罪被害者等への生活支援に関連する規定、刑事に関する手続に関する制度の整備等
  • 第三章 犯罪被害者等施策推進会議 特別の機関として、犯罪被害者等施策推進会議の設置等

2.犯罪被害者基本法

2-1.第一章 総則

 第一章では目的、定義、基本理念の他、「国の責務」「地方公共団体の責務」「国民の責務」について講じています。 まず「国の責務」とは犯罪被害者等のための施策を総合的に策定し実施する責務であり、第3章にもありますが、犯罪被害者等施策推進会議の設置についても記述しています。 「地方公共団体の責務」とは犯罪被害者支援に向けて国との役割分担を講じるとともにその地域に応じた施策を行うことが求められており周囲の方々は犯罪被害者の平穏を害することのないよう十分配慮しながらその施策への協力を求めています。  又、犯罪被害者基本法では政府に長期的に講ずべき犯罪被害者等のための施策として「犯罪被害者等基本計画」を定め被害者支援を実施するとともに犯罪被害者支援の活動を推進することを定めています。 第一章をまとめると大きく以下のとおりです。 (1)目的・定義・基本理念 (2)国の責務・地方公共団体の責務・国民の責務・連携協力 (3)犯罪被害者等基本計画

2-2.第二章 基本的施策

 第二章は犯罪被害者施策に関する基本事項を記載しています。情報提供に始まり損害賠償・給付金などの金銭的支援や心身ダメージからの立ちなるまでの保健サービスや福祉サービスが提供されるよう必要な施策を講じることの精神的支援、居住・雇用の安定など生活支援、刑事手続き、犯罪被害者の環境に理解のある専門的知識又は技能を有する職員の配置が規定されています。 (1)相談及び情報の提供 (2)金銭的支援制度(損害賠償の請求についての援助等・給付金の至急にかかる制度の充実等) (3)精神的支援(保険サービス・福祉サービスの提供) (4)安全確保・雇用の安定・居住安定 (5)刑事に関する手続への参加の機会を拡充するための制度の整備等 (6)保護、捜査、公判等の過程における配慮等

2-3. 第三章 犯罪被害者等施策推進会議

 第三章では第一章で記載した犯罪被害者基本計画を作成し支援施策を推進する機関として内閣府に、特別の機関として、犯罪被害者等施策推進会議(以下「会議」という。)をおくことを規定しています。更に犯罪被害者等施策推進会議では犯罪被害者の施策の重要事項について審議するとともに、犯罪被害者等のための施策の実施を推進し、並びにその実施の状況を議するとともに、犯罪被害者等のための施策の実施を推進し、並びにその実施の状況を検証し、評価し、及び監視することを規定しており適正な運用を行うことを記載しています。

犯罪被害者等基本法―Rollover―

第一章総則 (目的) 第一条 この法律は、犯罪被害者等のための施策に関し、基本理念を定め、並びに国、地方公共団体および国民の責務を明らかにするとともに、犯罪被害者等のための施策の基本となる事項を定めること等により、犯罪被害者等のための施策を総合的かつ計画的に推進し、もって犯罪被害者等の権利利益の保護を図ることを目的とする。 (定義) 第二条 この法律において「犯罪等」とは犯罪およびこれに順ずる心身に有害な影響を及ぼす行為をいう。 2.この法律において「犯罪被害者等」とは、犯罪等により害をこうむったもの及びその家族または遺族をいう。 3.この法律において「犯罪被害者等のための施策」とは犯罪被害者等が、その受けた被害を回復し、間は軽減し、再び平穏な生活を営むことができるよう支援し、及び犯罪被害者等がその被害にかかる刑事に関する手続きに適切に関与することができるようにするための施策をいう。 (基本理念) 第3条 すべて犯罪被害者等は、個人の尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を有する。 2.犯罪被害者等のための施策は、被害の状況及び原因、犯罪被害者等が置かれている状況その他の事情に応じて適切に講ぜられるものとする。 3.犯罪被害者等のための施策は、犯罪被害者等が、被害を受けたときから再び平穏な生活を営むことができるようになるまでの間、必要な支援等を途切れることなくうけることができるよう、講ぜられるものとする。 (国の責務) 第4条 国は、前条の基本理念(事情において「基本理念」という。)にのっとり、犯罪被害者等のための施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。 (地方公共団体の責務) 第5条 地方公共団体は、基本理念にのっとり、犯罪被害者等の支援等に関し、国との適切な役割分担を踏まえて、その地方公共団体の地域の状況に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。 (国民の責務) 第6条 国民は、犯罪被害者等の名著、又は生活の平穏を害することのないよう十分配慮するとともに、国及び地方公共団体が実施する犯罪被害者等のための施策に協力するよう努めなければならない。 (連携協力) 第7条 国、地方公共団体、日本司法支援センター(総合法律支援法(平成16年法律第74号)第13条に規定する日本司法支援センターをいう。)その他の関係機関、犯罪被害者等の援助を行う民間の団体その他の関係する者は、犯罪被害者等のための施策が円滑に実施されるよう、相互に連携を図りながら協力しなければならない。 (犯罪被害者等基本計画) 第8条 政府は、犯罪被害者等のための施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、犯罪被害者等のための施策に関する基本的な計画(以下「犯罪被害者等基本計画」をいう。)を定めなければならない。 2.犯罪被害者等基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。 一 総合的かつ長期的に講ずべき犯罪被害者等のための施策の大綱 二 前号に掲げるもののほか、犯罪被害者等のための施策を総合的かつ計画的に推進するための必要な事項 3. 内閣総理大臣は、前項の規定による閣議の決定があったときは、遅滞なく、犯罪被害者等基本計画を公表しなければならない。 4.内閣総理大臣は、前項の規定による閣議の決定があったときは、遅滞なく、犯罪被害者等基本計画を公表しなければならない。 5.前2項の規定は、犯罪被害者等基本計画の変更について準用する。 (規制上の措置等) 第9条 政府は、この法律の目的を達成するため、必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講じなければならない。 (年次報告) 第10条 政府は、毎年、国会に、政府が講じた犯罪被害者等のための施策についての報告書を提出しなければならない。 第2章 基本的施策 (相談及び情報の提供) 第11条  国及び地方公共団体は、犯罪被害者等が日常生活又は社会生活を円滑に営むことができるようにするため、犯罪被害者等が直面している各般の問題について相談に応じ、ひつような情報の提供及び助言を行い、犯罪被害者等の援助に精通している者を紹介する等必要な施策を講ずるものとする。 (損害賠償の請求についての援助等) 第12条 国及び地方公共団体は、犯罪等による被害にかかる損害賠償の請求の適切かつ円滑な実現を図るため、犯罪被害者等の行う損害賠償の請求についての援助、当該損害賠償の請求についてその被害者にかかる刑事に関する手続きとの有機的な連携を図るための制度の拡充等必要な施策を講ずるものとする。 (給付金の至急にかかる制度の充実等) 第13条 国及び地方公共団体は、犯罪被害者等が受けた被害による経済的負担の軽減を図るため、犯罪被害者等に対する給付金の至急にかかる制度の充実等必要な施策を講ずるものとする。 (保険医療サービス及び福祉サービスの提供) 第14条 国及び地方公共団体は、犯罪被害者等が心理的外傷その他犯罪等により心身に受けた影響から回復できるようにするため、その心身の状況等に応じた適切な保険医療サービス及び福祉サービスが提供されるよう必要な施策を講ずるものとする。 (安全の確保) 第15条 国及び地方公共団体は、犯罪被害者等が更なる犯罪等により被害を受けることを防止し、その安全を確保するため、一時保護、施設への入所による保護、防犯にかかる指導、犯罪被害者等がその被害にかかる刑事に関する手続きに承認等として関与する場合における特別の措置、犯罪被害者等にかかる個人情報の適切な取り扱いの確保等必要な施策を講ずるものとする。 (居住の安定) 第16条 国及び地方公共団体は、犯罪等により従前の住居に居住することが困難となった犯罪被害者等の居住の安定を図るため、公営住宅(公営住宅法(昭和26年法律第193号)第2条第2号に規定する公営住宅をいう。)への入居における特別の配慮等必要な施策を講ずるものとする。 (雇用の安定) 第17条 国及び地方公共団体は、犯罪被害者等の雇用の安定を図るため、犯罪被害者等が置かれている状況について事業主の理解を深める等必要な施策を講ずるものとする。 (刑事に関する手続への参加の機会を拡充するための制度の整備等) 第18条 国及び地方公共団体は、犯罪被害者等がその被害にかかる刑事に関する手続きに適切に関与することができるようにするため、刑事に関する手続きの進捗状況等に関する情報の提供、刑事に関する手続きへの参加の機会を拡充するための制度の整備等必要な施策を講ずるものとする。 (保護、捜査、公判等の過程における配慮等) 第19条 国及び地方公共団体は、犯罪被害者等の保護、その被害にかかる刑事事件の捜査又は公判等の過程において、名誉又は生活の平穏その他犯罪被害者等の人権に十分な配慮がなされ、犯罪被害者等の負担が軽減されるよう、犯罪被害者等の心身の状況、その置かれている環境等に関する理解を深めるための訓練及び啓発、専門的知識又は技能を有する職員の配置、必要な施設の整備等必要な施策を講ずるものとする。 (国民の理解の増進) 第20条 国及び地方公共団体は、教育活動、広報活動等を通じて、犯罪被害者等が置かれている状況、犯罪被害者等の名誉又は生活の平穏への配慮の重要性等について国民の理解を深めるよう必要な施策を講ずるものとする。 (調査研究の推進等) 第21条  国及び地方公共団体は、犯罪被害者等に対し専門的知識に基づく適切な支援を行うことができるようにするため、心理的外傷その他犯罪被害者等が犯罪等により心身に受ける影響及び犯罪被害者等の心身の健康を回復させるための方法等に関する調査研究の推進並びに国の内外の情報の収集、整理及び活用、犯罪被害者等の支援にかかる人材の養成及び資質の向上等必要な施策を講ずるものとする。 (民間の団体に対する援助) 第22条 国及び地方公共団体は、犯罪被害者等に対して行われる拡販の支援において犯罪被害者の援助を行う民間の団体が果たす役割の重要性にかんがみ、その活動の促進を図るため、財政上及び税制上の措置、情報の提供等必要な施策を講ずるものとする。 (意見の反対及び透明性の確保) 第23条  国及び地方公共団体は、犯罪被害者等のための施策の適切な策定及び実施するため、犯罪被害者等の意見を施策に反映し、当該施策の策定の過程の透明性を確保するための制度を整備する等必要な施策を講ずるものとする。 第3条 犯罪被害者等施策推進会議 (設置及び所掌事務) 第24条  内閣府に、特別の機関として、犯罪被害者等施策推進会議(以下「会議」という。)をおく。 会議は、次に掲げる事務をつかさどる。 一 犯罪被害者等基本計画の案を作成すること。 二 前号に掲げるもののほか、犯罪被害者等のための施策に関する重要事項について審議するとともに、犯罪被害者等のための施策の実施を推進し、並びにその実施の状況を議するとともに、犯罪被害者等のための施策の実施を推進し、並びにその実施の状況を検証し、評価し、及び監視すること。 (組織) 第25条 会議は、会長及び委員住10人以内を持って組織する。 (会長) 第26条 会長は内閣官房長官をもって充てる。 2 会長は、会務を総理する。 3 会長に事故があるときは、あらかじめその氏名する委員がその職務を代理する。 (委員) 第27条 委員は次に掲げる者をもって充てる。 一 内閣官房長官以外の国務大臣のうちから、内閣総理大臣が指定する者。 二 犯罪被害者等の支援等に監視優れた識見を有する者のうちから、内閣総理大臣が任命する者。 2 前項第二号の委員は、非常勤とする。 (委員の任期) 第28条 前条第1項第二号の委員の任期は、2年とする。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。 2 前条第一項第2号の委員は、再任されることができる。 (資料提出の要求等) 第29条 会議は、その所掌事務を遂行するために必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対し、資料の提出、意見の開陳、説明その他必要な協力を求めることができる。 2 会議は、その所掌事務を遂行するために得に必要があると認めるときは、前項に規定する者以外に解しても、必要な協力を依頼することができる。 (政令への委任) 第30条 この章に定めるもののほか、会議の組織及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。