ポールアンソニーサムエルソン(1915年-2009年)「経済学」

3月 26, 2013 · Posted in 経済理論入門 · Comment 

 20世紀後半を代表するアメリカの経済学者のサムエルソンは経済学を科学として確立した天才として理論経済学や多岐にわたる応用経済学の分野で幅広く活躍し近代経済学の父とも呼ばれ、ケインズ経済学と新古典派経済学を総合する新古典派総合の理論を確立した経済学者として知られています。1948年に出版した「経済学」は全世界でベストセラーを記録し、文字通り経済学の標準敵な入門教科書をとしていまも読み継がれる名著となっています。この経済学には経済学の基本的な命題や分析方法がまんべんなく盛り込まれており、経済的組織の基礎的な諸問題、近代経済における始業と指令、需要と供給の原理といっ経済学の基礎的な概念に始まり、マクロ経済学の基本的概念と政策、ミクロ経済学(供給、需要、製品市場)賃金、レント、及び利潤、所得の分配、経済成長と国際貿易などに至るまで内容が網羅的かつ詳細記述されています。

 1955年に改定された第三版ではアダムスミスに始まる古典派とケインズ経済学を融合させ「新古典派総合」という経済学の新潮流を生み出しています。サムエルソンが経済学を科学として確立したという評価はここでケインズの所得理論を数学的に価格理論と融合する試みを行ったことからもたらされており、「新古典派総合」は数学的理念によって裏付けられた科学的な理論体系となっています。
 この理論は不況時に公共投資を実施することによる有効性を指摘し、総需要政策で景気の過熱や過度の後退を避けることで成長を維持できるとし、新古典派経済学とケインズの唱えたマクロ経済学を融合を図る理論となっています。その結果1970年にはノーベル経済学賞を需要し、サムエルソンの名は一層高まることとなりました。同様にこの新古典派総合の理論は日本の1960年代の民主党政権に多大な影響力を与えることになります。

 80年代には規制緩和と民営化の推進によって市場を有効機能させるべきだという市場本位型の新保守主義が台頭しますが、90年代になって再び新古典派総合的な混合経済体制(ミクロは市場原理に任せ、マクロは政府がコントロールする)への流れが強まり、その後はアメリカ経済学会の主流派を形成しています。
 サムエルソンはノーベル経済学賞受賞後、1970年代のスタグフレーション(不況下のインフレ)に、サミュエルソンは有効な対策を提唱できず一時影響力を弱めることになりましたが、経済学会に多大な影響と業績を残し2009年にマサチューセッツ州の自宅で死去なされました。

シュンペーター(1883-1950) の景気循環理論

3月 25, 2013 · Posted in 経済理論入門 · Comment 

◆ヨーゼフアロイスシュンペータ―(1883-1950) シュンペータの景気循環理論

20世紀前半を代表する経済学者としてケインズと並び称されるシュンペータ―はケインズのもっとも痛烈な批判者でした。理論的な立場はもとより政治の世界でせっきょ区的に政策に関与したケインズに対して理論体系の構築に全精力を注ぎこんだのがシュンペータでした。

シュンペータが40代の終わりにハーバード大学の招きをうけてアメリカにわたり完成させた著書が「景気循環論」です。その副題は資本主義家庭の理論的・歴史的・統計的分析」です。 ここでシュンペーターは景気循環のメカニズムを分析するためにそれまでのキチン循環、ジュグラ―循環、コンドラチェフ循環という異なる景気循環のプロセスを複合的に捉えています。 そして景気循環の本質は外的な要因による変化ではなく企業家の革新による自立的変化による減少だという考えを導き出しています。企業家の革新とはシュンペーターの理論の中心概念であり今もイノベーションといった言葉で企業家精神として受け継がれています。イノベーションは初期の著書『経済発展の理論』では新結合と呼んでいました。イノベーションとは企業家の革新として経済活動において旧方式から飛躍して新方式を導入することでありシュンペーターはイノベーションとして以下の5類型を提示しています。

  1. 新しい財貨の生産
  2. 新しい生産方法の導入
  3. 新しい販売先の開拓
  4. 新しい仕入先の獲得
  5. 新しい組織の実現(独占の形成やその打破)

経済発展は生産要素の革新から生まれその革新による錯乱作用が均衡状態を回復するとき、新しい価値体系と大量の生産物が生まれ、このダイナミックな景気循環繰り返しの中で資本主義は進歩を遂げてきました。 しかしその進歩のなかで大企業の出現、企業組織の官僚化、革新の組織化といった同意かの避けがたく進展しています。それが経済の社会主義的管理と企業家個人の能力の低下、衰退を招き、それはやがて資本主義経済の崩壊に向かうだろうと予見しました。

ハーバード大学でサンエルソンやガルブレイズらのちの一流経済学者を育てるなどシュンペーターの果たした役割は非常に大きく企業家の革新性を重要視した経済の見方はいまも企業家たちのあくぃだで幅広く支持されています。

そのスケールの大きな理論は20世紀後半に爆発的な発展を遂げた世界経済を買い得するための遺産を数多く残しています。

◆ジュグラー循環 物価

利子率の変動などから経済活動には7-10年周期の循環運動があることを理論づけをしている。 中期波動とも呼ばれる。企業の設備投資に起因しています。フランスの経済学者J・クレメンス・ジュグラーが1860年の著書の中でその存在を主張したため、シュンペーターの景気循環論から「ジュグラー循環」と呼ばれています。

◆キチン循環

平均40か月の周期をもつ循環があり4つのジュグラ―循環には2.3個の小循環があることを説明しています。 キチンの波は在庫 の増減に伴い生じる景気循環であるとされており、在庫循環とも呼ばれアメリカの経済学者であるジョセフ・A・キチンが提唱したことによりその名前の由来となっています。

◆コンドラチェフ循環

卸売物価指数、公債価格、賃金率、輸出乳額、石炭生産量、鉄生産量を分析して50年前後の長期波動を発見しました。ロシアの経済学者ニコライ・ドミートリエヴィチ・コンドラチエフによる1925年の研究でその存在が主張されたことから、シュンペーターの景気循環論によって「コンドラチェフの波」と呼ばれ、その要因としてシュンペーターは技術革新を唱えています。第1波の1780 – 1840年代は、紡績機、蒸気機関などの発明による産業革命、第2波の1840 – 1890年代は鉄道建設、1890年代以降の第3波は電気、化学、自動車の発達によると分析しています。

◆クズネッツ循環 約20年の周期の循環

アメリカの経済学者サイモン・クズネッツが1930年にその存在を主張したことから、「クズネッツの波」と呼ばれ、商品の生産量と価格の系列らトレンドを除き20年を少し上回る平均周期をもった循環を発見しています。 約20年という周期は、住宅や商工業施設の建て替えまでの期間に相当することから、建設需要に起因するサイクルと考えられており、子が親になるまでの期間に近いことから人口の変化に起因するとする説もあります。

ケインズ(1883-1950)の有効需要の原理

3月 25, 2013 · Posted in 経済理論入門 · Comment 

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 今回はマクロ経済学の基本理論を生み出したジョン・メイナード・ケインズの有効需要の原理を学んでみましょう。

◆ ジョンメイナードケインズ(1883-1946)

【ジョン・メイナード・ケインズの有効需要の原理】
 ケインズはマルクスがなくなった年に生まれ、20世紀前半を代表する経済学の巨星としてマクロ経済学の基本理論を生み出しました。
ケインズはそれまでの経済額の主流だった新古典派経済学を覆す新しい経済理論を打ち出し、ケインズ革命と呼ばれる一大センセーションを巻き起こしました。
 その背景には1929年10月24日、ニューヨークのウォール街におこった株価の大暴落は、世界恐慌となって資本主義諸国につぎつぎと波及していきました。とくにアメリカ経済のうけた打撃は大きく29年に1044億ドルであった国民総生産は1933年には560億ドルにおいており、個人所得においても858億ドルから472億ドルまで下り、生産も収入も1/2に落ちていました。
同様にイギリスもアメリカの不況の影響を受け工業生産は1/2まで下り、1890年の不況の時15%ほど低下したに過ぎない物価が大幅に低下し、世界貿易は1/3にまで落ちていました。その影響をうけ、なによりも問題であったのは失業者の増大です。アメリカでは恐慌前の年では全労働者の3%に過ぎなかった失業者が1933年には25%にまで膨れ上がっています。
同様にイギリスでも1920年代すでに100万をこえる慢性的失業者を抱えていましたが、1933年の300万人に近づき労働派遣加入者の全体の18.5%が失業者となっています。

 

 ケインズは現状問題となっている失業問題の解決を図るため、賃金や労働需要と労働供給ひいては競争を阻害している労働市場独占の排除を次の一般理論を打ち出します。
 その著書「雇用・利子および貨幣の一般理論(1936」年)は第二次大戦後の先進国の経済政策にも決定的な影響を与えています。一般理論の骨組み前提は以下の3点です。
  1.  労働・資源は充分に余っており、労働者は不完全雇用の状態である。
  2. 社会全体の資本量は変化せず、したがって技術は変化しない場合を考える。
  3. 資本の間には競争があり部分的な不均衡は生まれない。
 この骨組みのもと、大量な失業はなぜ生まれるかという労働市場の問題であり雇用量をいかにして増すかがケインズの問題でした。その結果、社会認識と経済分析とからうちだしたケインズの政策は次の政策です。

 

1. 消費性向を高め貯蓄性向を低めること

 通常豊かな人の貯蓄性向は大きく、貧しい人のそれは小さく、所得がある程度以下になれば、収入を全部消費しても生活できず、貯蓄をひきだし て消費する場合もあります。だからもしも豊かな人の所得を累進課税によってとりたてて貧しい人に社会保障その多で与えるならば、社会全体としての貯蓄性向は小さくなりこの要求を満たすことができます。租税政策による平等化政策、これが一般理論を指し示す第一の政策となっています。

 

  2. 利子率を下げて民間投資を増やすこと。ケインズはその具体的な政策として公開市場政策を実施。
 利子率をさげたいときはイングランド銀行が金融し市場から国際や証券をどんどん買い入れ資金を金融市場に流しいれていきます。このことは債権や株を売って現金で持とうとする売りの力を弱め、逆に現金を債権にかえようとする買を援助することになり債権や株の時価はのぼり、利回りで表現された利子率は低下します。

 

 3. 利子率が下ってもなかなか民間投資が増えない時には政府が進んで投資を増やすように、公共投資などの政府投資を実施。
 公共投資などの政府投資を実施することで財政の赤字を人為的につくって有効需要を作り出します。
この理論の核となるのが「有効需要の原理」であり、これは「現実の産出量・経済の活動水準は潜在的生産能力ではなく需要によって規定される」というものです。

 

 これは当時支配していたアルフレッド・マーシャルの「「経済学原理」を元にした新古典派経済学の考え方「供給が需要を創造するから超過供給であっても価格調整により需要の均衡が図られる」つまり生産した分だけみんながほしがる=余ったら価格を下げれば買うという説を否定して価格調整ではなく数量調整によって需要に等しい水準に供給が決定されるという新しい考え方を提示するものでした。
ここでいう需要とは貨幣的な購買力をもって実際に需要者として市場に登場するという裏付けを持つ有効需要です。
 この理論体系の完成が一国の経済全体を全体的に解読するマクロ経済学の誕生でした。
ケインズが生きた時代はイギリス経済が失速していく過程にぴたりと重なっている。ケインズはそれを19世紀型経済システムの崩壊ととらえています。そして問題解決のために政府による財政・金融政策を通したマクロ的有効需要管理を主張・実践しました。
 ケインズの死後その理論はケインジアンと呼ばれる経済学者たちによって受け継がれ現在に至っています。ケインズ経済学は古い理論とみなされがちですが、とくに不況下においてその有効性が見直されることは少なくありません。

【関連ワード】

■有効需要の原理
 ケインズ以前の新古典派経済額の考え方は「供給が需要を創造するから超過供給であっても価格調整により需要の均衡が図られる(生産した分だけみんながほしがる=余ったら価格を下げれば買う)という理論であったが、ケインズは価格調整ではなく数量調整によって需要に等しい水準に供給が決定され、国民経済の生産量(国民純生産)は生産物に対するそう有効需要によって決定されるという有効需要の原理を生み出しました。
 その結果問題解決のため「政府による財政・金融政策を通したマクロ的有効需要管理」を主張しています。

■アルフレッドマーシャル
 価格の事由な動きが経済を調和に導き、自由競争、個人主義、安価な政府、均衡財政主義という自由主義時代を特徴づける一連の思想を生み出しています。