アベノミクス政策効果と突然の衆院解散のストーリー!?

11月 18, 2014 · Posted in ニューストピックス!? · Comment 

 本日18日、安倍首相は消費税率10%への引き上げを先送りする方針と今週中に衆院解散に踏みきる表明ををしました。今回の衆院解散のシナリオとはいったいどのようなものだったのか。今回はこの件について書いていきたいと思います。

なぜ突然の衆院解散劇へと導かれてしまったのか?決定的な要因は消費税率の引き上げの延期でした。シンプルに考えるとアベノミクス政策で積極的な財政出動を行った結果、多額の財政赤字ができてしまった、その結果増税をしなければならない背景が出来上がってしまっている中、安倍首相はアベノミクス政策で経済効果が見られたら増税をするとマニフェストで公約をしており政策で予想していた効果が現れなかったことでこの度「増税を延期する」と表明したことが政策に対する国民への不信感を抱かせる背景を生み出してしまった、更にGDP成長率の速報値で経済効果を表す数値によって政策効果が明確に出されたことも重なって今回の突然の衆院解散劇へと導かれてしまったと考えられます。

それでは実際にアベノミクス効果を示す経済効果を表す数字である国内総生産GDP成長率はどうなのでしょうか?今期はアベノミクス第三の矢である「民間投資の喚起」のフェーズに突入し目標である「名目GDP成長率3%程度、実質GDP2%の実現」を予定していたのに対し実際には民間の設備投資額が思った以上に伸びず7~9月は名目-3%、実質-1.6%と2期連続マイナス成長となり非常に残念な結果をだしています。世論ではここで一度増税に対しての意思表示を問うべきといっておりますが、この数字では実際には増税への世論の見解はほぼ反対になると思って間違いないでしょう。

それでは今回の衆院解散を世論はどう見ているのでしょうか?実は今回の衆院解散についてはインターネット等で法律根拠とその解散理由について議論がなされているようです。衆院解散の法律根拠については任期満了前の衆院解散は憲法第7条「天皇の国事行為」と憲法第69条「衆議院の内閣不信任」の2つの事由によります。

■第7条 天皇の国事行為
天皇は内閣の助言と承認により、国民のために次の国事に関する行為を行う。
③衆議院を解散すること。
■憲法第69条 衆議院の内閣不信任
内閣は、衆議院で不信任の決議をしたときは、10日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。

今回はどちらの法律根拠によって解散が行われるのでしょうか?一般的な憲法理解では憲法第69条根拠で考えられますが、現時点で憲法第7条根拠に基づく可能性もあるようです。憲法69条と憲法7条の法律根拠の違いとは何か。憲法解釈では大きく異なっている部分は内閣総辞職がありえるかどうかということが二つの条文による明確な違いです。仮に憲法69条の内閣不信任決議による衆院解散では衆院解散を拒むことができた、更には内閣総辞職だけでも良かったのではないかということも議論の的になります。
では憲法第7条の天皇の国事行為である場合はどうなのでしょうか?国事行為の場合の衆院解散は一般的にはあくまで特例として定められており、内閣の助言で天皇が国事行為として衆院解散を行うことになり、内閣総辞職については定められていません。
更に今回の衆院解散による議論の的になっている件が「明確な理由がない」と見られていること、実際には解散へのシナリオと背景はあるが「明確な理由」と呼べるものがないと私は考えています。GDP成長率速報値により政策効果とそれを考慮した上での増税延期により背景は出来上がっていますが、ここで述べている明確な理由とはなんなのでしょう。突き詰めて考えると政策効果による結果を「明確に理由」として表明しないことには民意は納得しないということを訴えているのだと考えられます。そのことが「増税について一度民意を問うべき」との件と共に世論から批評をうけることになった原因のようです。

それでは衆院解散とその後の流れはどのような流れで行われていくのでしょうか?これを読まれている方はよくご存知かと思われますが、衆院解散後の流れは憲法第54条法律根拠により解散後40日以内に総選挙が行われ、その後30日以内に最初の国会(特別会)が開催されることとなり、旧内閣が総辞職することになります。つまり内閣発足まで最低でも40日以上最長70日がかかります。その間、新内閣が発足するまでは旧内閣が内閣の仕事を行っていき新内閣発足後初めて国会の収集で旧内閣は解散となり、憲法70条法律根拠により新内閣総理大臣の任命がされることになります。

それでは今回の衆院解散によってどのような影響が発生するのでしょうか?まず一つ目が衆議院が解散した場合は憲法54条法律根拠により両院同一会期の原則により参議院は閉会となり参議院で定められることも停止状態となります。そのため安倍首相は審議中の「地方創生関連2法案」及び外国人漁業規制改正法案を18日までに参院を通過させ成立させた上で解散させる方針で取り組んでいる模様です。その他の法案については最低でも40日以降に成立される見通しとなり世論では消費税増税とともに時間稼ぎと見られており政策に消極的であると見られ国民に不信感を感じさせてしまうことでしょう。
二つ目が衆院解散にかかる経済効果ですが、今回の衆院解散によってどの程度の金額が動くことになるでしょう。ざっと500億~600億の金額が市場に出回ることになります。つまりはアベノミクスで顕著な効果が見られなかった分、解散によって一時的に市場に紙幣供給量を増やすことで若干の経済効果があるともと予想されます。しかし増税を控えアベノミクス政策の期待が下がり景況感ムードが下がってしまった現状では企業は設備投資の控え一般家庭では消費が停滞され貯蓄に回ることが予想されます。
三つ目がアベノミクス経済成長戦略に新たに加えられる政策若しくはそれに変わる新たな成長政策への期待が高まります。世論は今回のGDP速報値でアベノミクス政策の経済効果による恩恵は少ないと見ている傾向があります。実際には前回の増税とあいまって経済効果が見られるのは時期尚早とも言えますが、速報値を見るかぎり現時点で経済成長効果として顕著に表れておらず、このムードを変えるには新たな経済成長政策の表明が必要であり、アベノミクス成長戦略の継続の可否とともに衆院選選挙の一つのポイントとも見られています。今回の衆院解散によって市場全体は落ち込みが予想されます。しかしこの新たな政策への期待感を高め打ち出すことによって不信感を拭い景況ムードを高め回復に向かってほしいと考えています。

■憲法54条 衆議院の解散、特別会、参議院の緊急集会
①衆議院が解散された時は、解散の日から40日以内に、衆議院議員の総選挙を行い、その選挙の日から30日以内に、国会を召集しなければならない。
②衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。ただし、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる。
③前項ただし書の緊急集会においてとられた措置は、臨時のものであって、次の国会開会の後10日以内に、衆議院の同意がない場合には、その効力を失う。
■憲法70条 内閣総理大臣の不存在または新国会の召集と内閣の総辞職
内閣総理大臣がかけたとき、又は衆議院議員総選挙の後に初めて国会の召集があったときは内閣は総辞職をしなければならない。

現第2次安倍内閣(改造)は前回の安倍内閣から引き続き集団的自衛権、集団安全保障やアベノミクス政策の行使など多大な功績を残しており、今後もアベノミクス政策によって徐々に数値に出して経済成長と活性化につなげて欲しかった、そして衆院解散の考えは留まって欲しかったと思われる方も多いはずです。そのため、今回の衆院解散劇は晴天の霹靂で世論も大きく戸惑っています。
私自身もアベノミクス効果を実感し景況感ムードの高まりを感じるには現時点では時期尚早であり、今回の突然の衆院解散は必要なプロセスが不在であり改造内閣が発足して間もない現状としては早すぎる決断であることから反対ではありますが、速報値が出され衆院解散が決定されてしまった今、現安倍内閣のラストスパートを応援しながら今後の成り行きを見つめていきたいと思っています。

「サイバーセキュリティ基本法」成立の見通しについて!?

11月 13, 2014 · Posted in 社会ニューストピックス!? · Comment 
 今まで国会で議論されていた「サイバーセキュリティ基本法案」が10月23日、参院内閣委員会で可決され臨時国会で成立する見通しとなりました。

 なぜ今サイバーセキュリティに対する戦略が強く求められているのか?その背景にはICT事業の活性化と成長、デジタル家電の普及、ITインフラ整備された現代は国内は勿論国外からの度重なるサイバー攻撃に脅かされ、その被害状況は2013年度は約508万件に上り、前年度(約108万件)の5倍近くにまで膨れこれまでのセキュリティ対策では対応が難しくなってきています。更には2020年の東京五輪・パラリンピックを控えた今、2012年のロンドンオリンピックで起こったサイバー攻撃の件数を考えても更なるサイバー攻撃防御体制の強化を海外諸国からは強く求められています。
 このような時代背景の下、本法案は「サイバーセキュリティに関する施策を総合的かつ効果的に推進するため、サイバーセキュリティに監視、基本理念を定め、国の責務等を明らかにし、及びサイバーセキュリティ戦略の策定その他サイバーセキュリティに関する施策の基本となる事項を定めるとともに、サイバーセキュリティ戦略本部を設置する等の必要がある」という目的の下成立の見通しとなり、来年度より国会ではサイバーセキュリティ予算を大幅に組み入れ防御体制の強化に取り組む予定になっています。

 それではなぜ今本法案の成立が注目されているのでしょうか?度重なるサイバー攻撃の脅威もありますが、別の側面では新たな産業と市場を生む可能性を大きく秘めているからであると思われます。このサイバーセキュリティ法案が通過することで国、地方公共団体、重要インフラ事業者は再度サイバー攻撃に対する責務を見直すと共にこれまでソリューションとしての性質である迅速で効率化、利潤拡大を求められてきたIT産業の民間事業、教育機関は新たにサイバーセキュリティの施策促進に伴う市場としてセキュリティに対する認識を変えて新たな市場として参入することが求められます。その結果サイバーセキュリティに関連する施策を国、地方公共団体は重要インフラ事業、教育機関に打ち出していくことになりますがそれに伴いIT産業事業者はその都度(例えば私物のスマートフォン、電子機器の操作などに関する新たなマニュアル作成業務など)新たなソリューションとして施策の実現に向けた提案を求められる、その結果莫大な金額が動く新たな市場として注目されることになるでしょう。更に労働市場においては新たに雇用機会と人材の育成及び確保を創出することができる成長産業となることが期待されています。

 さて本法案の骨子はどのようなものなのでしょうか?このサイバーセキュリティ法案は全4章の35条で、第一章総則 第二章サイバーセキュリティ戦略、第3章基本的施策、第4章サイバーセキュリティ戦略本部から成り、内閣に新たにサイバーセキュリティ戦略本部を設置してIT総合戦略本部と国家安全保障会議(NSC)と連携しサイバーセキュリティ戦略を施策の打ち出しと実施・評価すると共にセキュリティ強化実現に向けて地方自治体などの関係機関には必要な協力体制を求め関連の取り組みを実施、そして民間事業者及び教育研究機関等には自発的な取組の促進を促す法案です。

 ではサイバーセキュリティ戦略本部はこの法案でどのような役割を担うのでしょうか?サイバーセキュリティ戦略本部の役割は次の四つ、サイバー攻撃に関する重大なインシデントの原因究明調査や、行政機関の経費・施策の評価を行う機関として設置されます。
①サイバーセキュリティ戦略の案の作成及び同戦略の実施推進
② 国の行政機関及び独法における対策基準の作成及び同基準に基づく施策の評価(監査を含む。)その他の同基準に基づく施策の実施推進
③ 国の行政機関で発生したサイバーセキュリティに関する重大な事象に対する施策の評価
(原因究明のための調査を含む。)
④ 上記のほか、次の事務
イ) サイバーセキュリティに関する重要施策の企画に関する調査審議
ロ) 同施策に関する府省横断的計画・関係行政機関の経費見積り方針・施策の実施に関する指針の作成、施策の評価その他の実施推進
ハ) 同施策の総合調整

インシデントの原因究明調査等では地方公共団体、独立行政法人、国立大学、特殊法人・認可法人には資料等の提出を義務付け関係強化を図り戦略を打ち出します。その直下には本部に関する事務の処理を適切に内閣官房に行わせるために必要な法制の整備等を担う内閣官房情報セキュリティセンター(NISC)を設け国の行政機関の情報システムに対する不正な活動の監視・分析、国内外の関係機関との連絡調整に必要な法制上・財政上の措置等の検討等を規定を行うことになります。

 今、日本は2020年に東京五輪・パラリンピックを控えサイバーセキュリティに対する脅威に対するセキュリティ対策と防御強化、認識の変化を日本国内だけではなく海外諸国に見せなければならないフェーズを迎えています。そして本法案成立により新たに創出される産業によってどのような機会が生み出されていくのか、私はその二点に注目して本法案の成り行きを見つめていきたいと思っています。