集団的自衛権の行使容認について―国際平和希求と亡国のイージス―

5月 10, 2014 · Posted in 社会ニューストピックス!? · Comment 

 昨日の政府有識者会議では集団的自衛権についての憲法第9条の解釈について「憲法第9条は集団的自衛権の行使や国連の集団安全保障への参加を禁ずるものではない」とされ13日に首相に提出される段階となりました。今回は集団的自衛権の行使・集団安全保障の容認とは何なのか、更には現状の政府方針について今回は書いていこうと思います。

 さて集団的自衛権とは何なのでしょうか。集団的自衛権の行使問題でキーワードとなるのが、「集団的自衛権」「個別的自衛権」「集団安全保障」「平和維持活動」です。「集団的自衛権」とはこれは隣国が武力攻撃を受けたときに自国が不測の自体に陥る可能性がある場合において自衛隊を派遣してその武力攻撃を対処 することで自国の安全を守るという国際法上の権利のことです。次に「集団安全保障」とは例えば国連加盟国の1国が武力攻撃を受けた時にその他の国連加盟国 が制裁するというものです。集団的自衛権・集団安全保障の行使については現在日本は国際連合憲章上は容認しているのにもかかわらず憲法第9条武力による威 嚇又は武力の行使は国際紛争を解決する手段としては永久にこれを放棄する」とし、武力行使の最小限度を超えてしまい許されないといった解釈をとっており禁じられていました。対して自国が武力攻撃を受けた時には武力行使に対処する権利を「個別的自衛権」と呼んでおりこれは現行法上容認されています。また「平 和維持活動」については集団安全保障とは別の活動とされ、国連が世界各地の紛争地域の平和の維持を図る手段としてまだまだ反対も多いですが可能とされています。

 しかし現在、加盟国から見れば「集団的自衛権・集団安全保障が国連憲章では容認しているにも関わらず」日本だけ参加しないのはやはりおかしいのではないかと加盟国から見られ国際関係にも影響がでてくる可能性もあるため現在容認に向けて協議をすすめています。
憲法改正によって進めるのか、憲法9条解釈によって集団的自衛権の行使容認に進めるのかその点も争点とされましたが現在憲法9条解釈について協議を進めています。

 今回の有識者会議では中国の軍事拡張、北朝鮮の脅威による安全保障環境がゆらいでいる安全保障背景があり条件を明確にした上で「憲法第9条は集団的自衛権の行使や国連の集団安全保障への参加を禁ずるものではない」とされ集団的自衛権とさらに「グレーゾーン事態」の関連法改正を行いグレーゾーン自体への対処の法整備をすることで不測の事態への対処することの重要性を訴求しています。
現在、この有識者会議の報告書の提出を受け来週にも政府基本方針を表明、その後に集団的自衛権で守る事例集を定め公明党に理解を求める閣議調整段階となっています。

 さて今回の集団的自衛権・集団安全保障の争点として次のことが挙げられます。
■国際平和希求・良好な国際関係を保つためには集団的自衛権の行使・集団安全保障は必要
■国連平和維持活動(PKO)で、自衛隊はNATO加盟国部隊がゲリラに襲われても駆けつけて警護できない
■日本近海の公海で米艦が攻撃されても自衛隊は守れない
■自衛隊の本質が損なわれてしまい生命に危険性が及んでしまう。
■東アジア近隣諸国からは日本の集団的自衛権には反対意見が多い。

 簡単に言えば、同盟諸国から守ってもらうことがあっても同盟諸国が襲われても助けることができない、更には良好な国際関係を保つことができず政治的弱みとなってしまうという意見が強くなっています。しかし反面では自国が直接的に武力攻撃を受けているわけでもないのに現行の憲法解釈では自衛隊を危険にさらすことはないのに行使容認をすることで自衛隊の生命に危険を及ぼしてしまう危険性をもってしまうことを強く認識する必要があるようです。
 また近隣諸国の反応は戦時中での日本の歴史問題も加わり東アジア近隣諸国からは日本の集団的自衛権の行使に関しては反対意見が多くあまり協力的ではない状況がうかがえます。

 私の意見としては集団的自衛権の行使容認に対して憲法改正ではなく憲法解釈により行う点には賛同します。憲法改正ではこれまで個別的自衛権のみとされてきた平和希求への日本の憲法本質が失われてきます。更には改正することでは他国への「積極的な武力行使」を行ってしまう可能性もでてくる、その点に関しては多少曖昧模糊な要素があっても憲法解釈を変えることで集団的自衛権の行使容認することには賛成です。しかし反面では解釈を変えるという曖昧な要素を含んでしまうことでグレーゾーン自体も含め明確な定義づけが必要であり、一例一例の事態に慎重な姿勢が必要になると考えられます。
 集団的自衛権の行使容認・集団安全保障容認については自国を守るわけではないのにも関わらず自衛隊の自衛隊の生命に危険が及んでしまう、更には自衛隊の自国の安全を守るという本質が損なわれ、「亡国のイージス」となってしまう可能性を含んでいることも否めず、良好な国際関係を保つためとはいえまだまだ素直に賛同はできない要素があると考えています。
 この点を踏まえて今後の閣議内容をみつめていきたいと思います。

【日本国憲法】
■憲法9条 戦争の放棄、戦力の不保持および交戦権の否認
①日本国民は正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し国権の発動たる戦争と武力による威嚇又は武力の行使は国際紛争を解決する手段としては永久にこれを放棄する。
②前項の目的を達するため陸海空軍その他の戦力はこれを保持しない。国の交戦権はこれを認めない。

【国際連合憲章】
第7章 平和に対する脅威、平和の破壊および侵略行為に関する行動
第51条
この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和および安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的または集団的自衛の固有の権利を害するものではない。この自衛権の行使に当たって加盟国がとった措置は、田立に安全保障理事会に報告しなければならない。また、この措置は、安全保障理事会が国際の平和および安全の維持または回復のために必要と認める行動をいつでもとるこの憲章に基づく機能および責任に対しては、いかなる影響を及ぼすものではない。

2013/5/07 アベノミクスの効果は!?

5月 7, 2014 · Posted in ニューストピックス!? · Comment 

 最近では数年ぶりの企業の賃金ベースアップ報道をはじめ失業率の減少、株価の上昇など景況感がよくなっているニュースを耳にしておりますが、今回はその要因となったアベノミクス政策について書きたいと思います。

 まずはおさらいとしてアベノミクス政策とはどのような政策なのでしょうか。アベノミクスの語源の由来は1981年1月20日から1989年1月20日の間にアメリカ合衆国の大統領として就任したレーガン大統領が行ったスタグフレーション状態の経済の回復に向けた自由主義経済政策の「レーガン」と「エコノミック」を結びつけたレーガノミクスに由来し、第二次安部内閣が2012年12月26日に発足したのちに2013年2月28日 第183回国会における安倍内閣総理大臣施政方針演説に打ち出した「3本の矢」と呼ばれる政策を柱とし、「停滞の20年」を踏まえてデフレからの早期脱却と「再生の10年」を目標に掲げた成長戦略の経済政策です。

 この3本の矢とは「大胆な金融緩和」「機動的な財政出動」「民間投資の喚起」であり「デフレマインドを一掃しデフレ脱却に向けた大胆な金融緩和」、「積極的に公共事業を推進」し景気を引っ張ることで民間の活力に火をつけ、更に活性化された民間からの「民間の投資意欲を引き出す」といった成長戦略を段階的に展開することで「経済政策パッケージの実行により日本経済を再び成長軌道に」を目的としています。
 その成長概要としては「持続的経済成長の好循環」「マクロ経済(景気)とミクロ面(構造問題)の好循環」「経済再生と財政健全化の好循環」の3つの循環を「3本の矢」によって最大限発揮することにより名目「GDP成長率3%程度、実質GDP2%の実現」と、「日本経済再生に向けた成長戦略」に繋げていくことを目標としています。

 さて実際のアベノミクス効果ですが第1の矢については大胆の金融緩和政策とはデフレ脱却を目的として「消費者物価上昇率2%目標」と「マネタリーベース増加」更に目標を達成するまでは「無期限の金融緩和」と掲げた大胆な金融緩和政策、「名目3%以上の経済成長の達成」等の日本銀行との政策連携をベースにした経済の持続的な成長の確保を目的とした政策についてですが、金融緩和政策に向けて日銀の黒田日銀総裁が発表した「量的・質的金融緩和」による「2年間でマネタリーベース(市場への資金供給量)を2倍」にすると発言したことは決して大胆な発言ではなく昨年以来マネタリーベースを増やし、市場へ資金供給量が増やすことで円安・株高がつづき雇用に関しては失業率改善につながり多少なりとも景況感がよくなってきた感があります。
さらに目標に関しては2014/04/02に1.5%の物価上昇率を見込んでいると目標は達成できなかったものの2年後には物価上昇2%を見込んだ金融政策を打ち出しています。
しかし一方では今回の金融緩和政策により金利上昇につながってしまった、消費、設備投資の伸び悩みも見られ不安定な面がみられます。

 次に第2の矢の機動的な財政出動については2013年の公共事業予算に10兆円超をくみ補正予算を大幅に組むことで公共投資を増加することで景気の下支えを行いながら民間企業に景気を牽引する役目を渡し、税対策で消費税8%上昇につなげる政策をとっています。この経済政策効果については名目GDP1%に寄与している、消費税8%の上昇に踏み切っていることから効果があったとの評価もありますが、他面では国債の発行による赤字財政の膨らみが見られ一概には良いとは言えないようです。

 第3の矢に関しては「第1の矢」の政策目標達成・「第2の矢」に続く成長戦略であり、その前提としてTPP交渉による関税撤廃と輸出貿易促進がカギとなるとして注目されていました。TPP交渉については「聖域なき関税撤廃が前提でないことが明確になった」として2013年2月に参加を表明しましたが、この効果は実際には期待とはうらはらに輸出減少・輸入増加となり過去最大の貿易赤字額となっています。現時点ではアベノミクスやTPP参加による輸出促進効果は見られず長期的に見る必要があると思っています。そのような背景もあり第3の矢として「民間投資の喚起」については輸出促進に繋がらず民間の設備投資額も減少しており思ったような効果は得られていないような状況のようです。

 最後に私の実感としてはアベノミクスの効果としては第一の矢の政策効果は株価上昇・円安傾向・物価上昇につながり順調に成長につながったように感じられますが、第2の矢・第3の矢の効果は現状、効果があまり見られず長期的見ていく必要があるように思っています。今後の課題として公共事業により発行した国債による赤字財政対策、貿易収支赤字に向けた対策、民間の消費意欲・投資意欲の喚起対策・聖域を守りながら自国の輸出促進につなげるTPP交渉問題などさまざまな面で注目が必要ですが、その中で私たちができることは「デフレマインドを一掃」していくこと、そして民間側でも景況感ムードを高めつつ民間投資増加に繋げる一翼を担っていくことがアベノミクス効果を高める共に長期的な日本経済の成長には不可欠であると考えています。