ケインズ(1883-1950)の有効需要の原理

3月 25, 2013 · Posted in 経済理論入門 · Comment 

ビジネスで使える経済情報サイトを目指し、すぐに学べる経済学と昨今の経済情報をピックアップしてお届けしています。

 今回はマクロ経済学の基本理論を生み出したジョン・メイナード・ケインズの有効需要の原理を学んでみましょう。

◆ ジョンメイナードケインズ(1883-1946)

【ジョン・メイナード・ケインズの有効需要の原理】
 ケインズはマルクスがなくなった年に生まれ、20世紀前半を代表する経済学の巨星としてマクロ経済学の基本理論を生み出しました。
ケインズはそれまでの経済額の主流だった新古典派経済学を覆す新しい経済理論を打ち出し、ケインズ革命と呼ばれる一大センセーションを巻き起こしました。
 その背景には1929年10月24日、ニューヨークのウォール街におこった株価の大暴落は、世界恐慌となって資本主義諸国につぎつぎと波及していきました。とくにアメリカ経済のうけた打撃は大きく29年に1044億ドルであった国民総生産は1933年には560億ドルにおいており、個人所得においても858億ドルから472億ドルまで下り、生産も収入も1/2に落ちていました。
同様にイギリスもアメリカの不況の影響を受け工業生産は1/2まで下り、1890年の不況の時15%ほど低下したに過ぎない物価が大幅に低下し、世界貿易は1/3にまで落ちていました。その影響をうけ、なによりも問題であったのは失業者の増大です。アメリカでは恐慌前の年では全労働者の3%に過ぎなかった失業者が1933年には25%にまで膨れ上がっています。
同様にイギリスでも1920年代すでに100万をこえる慢性的失業者を抱えていましたが、1933年の300万人に近づき労働派遣加入者の全体の18.5%が失業者となっています。

 

 ケインズは現状問題となっている失業問題の解決を図るため、賃金や労働需要と労働供給ひいては競争を阻害している労働市場独占の排除を次の一般理論を打ち出します。
 その著書「雇用・利子および貨幣の一般理論(1936」年)は第二次大戦後の先進国の経済政策にも決定的な影響を与えています。一般理論の骨組み前提は以下の3点です。
  1.  労働・資源は充分に余っており、労働者は不完全雇用の状態である。
  2. 社会全体の資本量は変化せず、したがって技術は変化しない場合を考える。
  3. 資本の間には競争があり部分的な不均衡は生まれない。
 この骨組みのもと、大量な失業はなぜ生まれるかという労働市場の問題であり雇用量をいかにして増すかがケインズの問題でした。その結果、社会認識と経済分析とからうちだしたケインズの政策は次の政策です。

 

1. 消費性向を高め貯蓄性向を低めること

 通常豊かな人の貯蓄性向は大きく、貧しい人のそれは小さく、所得がある程度以下になれば、収入を全部消費しても生活できず、貯蓄をひきだし て消費する場合もあります。だからもしも豊かな人の所得を累進課税によってとりたてて貧しい人に社会保障その多で与えるならば、社会全体としての貯蓄性向は小さくなりこの要求を満たすことができます。租税政策による平等化政策、これが一般理論を指し示す第一の政策となっています。

 

  2. 利子率を下げて民間投資を増やすこと。ケインズはその具体的な政策として公開市場政策を実施。
 利子率をさげたいときはイングランド銀行が金融し市場から国際や証券をどんどん買い入れ資金を金融市場に流しいれていきます。このことは債権や株を売って現金で持とうとする売りの力を弱め、逆に現金を債権にかえようとする買を援助することになり債権や株の時価はのぼり、利回りで表現された利子率は低下します。

 

 3. 利子率が下ってもなかなか民間投資が増えない時には政府が進んで投資を増やすように、公共投資などの政府投資を実施。
 公共投資などの政府投資を実施することで財政の赤字を人為的につくって有効需要を作り出します。
この理論の核となるのが「有効需要の原理」であり、これは「現実の産出量・経済の活動水準は潜在的生産能力ではなく需要によって規定される」というものです。

 

 これは当時支配していたアルフレッド・マーシャルの「「経済学原理」を元にした新古典派経済学の考え方「供給が需要を創造するから超過供給であっても価格調整により需要の均衡が図られる」つまり生産した分だけみんながほしがる=余ったら価格を下げれば買うという説を否定して価格調整ではなく数量調整によって需要に等しい水準に供給が決定されるという新しい考え方を提示するものでした。
ここでいう需要とは貨幣的な購買力をもって実際に需要者として市場に登場するという裏付けを持つ有効需要です。
 この理論体系の完成が一国の経済全体を全体的に解読するマクロ経済学の誕生でした。
ケインズが生きた時代はイギリス経済が失速していく過程にぴたりと重なっている。ケインズはそれを19世紀型経済システムの崩壊ととらえています。そして問題解決のために政府による財政・金融政策を通したマクロ的有効需要管理を主張・実践しました。
 ケインズの死後その理論はケインジアンと呼ばれる経済学者たちによって受け継がれ現在に至っています。ケインズ経済学は古い理論とみなされがちですが、とくに不況下においてその有効性が見直されることは少なくありません。

【関連ワード】

■有効需要の原理
 ケインズ以前の新古典派経済額の考え方は「供給が需要を創造するから超過供給であっても価格調整により需要の均衡が図られる(生産した分だけみんながほしがる=余ったら価格を下げれば買う)という理論であったが、ケインズは価格調整ではなく数量調整によって需要に等しい水準に供給が決定され、国民経済の生産量(国民純生産)は生産物に対するそう有効需要によって決定されるという有効需要の原理を生み出しました。
 その結果問題解決のため「政府による財政・金融政策を通したマクロ的有効需要管理」を主張しています。

■アルフレッドマーシャル
 価格の事由な動きが経済を調和に導き、自由競争、個人主義、安価な政府、均衡財政主義という自由主義時代を特徴づける一連の思想を生み出しています。

« 前ページへ